キックボクシングジムでのあれこれ

連続射殺魔

第1話 ビッグマウス

ジムでは、オレはすごいビッグマウスのボケキャラで通してます。

もうおっさんなので。


誰かに勝負を挑まれると

「いやオレとやるのはまだ早いでしょ」

とか言い放つと、大体の危機は回避できます。

堂々と言い放つのがポイントです。


練習をサボってしばらくジムに来なかった時の言い訳は

「いやぁ実は山篭りしてましてね~」

「クマとかじゃねーとオレの相手にはならねーわ」

とか言ってます。 


じゃあお前腕立て500回スクワット1000回やれと会長に言われれば

「あいたたた 過去の宿敵(とも)との激闘で負った古傷が~」

とか言うと大概のアレはやり過ごせます。


いつの間にかキック歴は15年にもなっていて、けっこう年季が入っている方なので

若い子に過去の事を聞かれれば

「実は地下格闘技で3人殺してて、もう相手がいないんだよね

それでなくともほとんどの対戦相手を再起不能にしちゃったからさぁ~^^」

とか答えると、大抵の人は何かを察してオレとは距離を取ってくれます。


ビッグマウスを徹底すると次第にジムの人達が

オレのビッグマウスを求めてくるようになりました。

猛練習をこなして瀕死で横たわってる試合を控えた選手を見て

「よぉし、だいぶ体が暖まってきたようだな(゜∀゜)」

とかヌケヌケと言い放っているのですが、

これは多分僕だけに許された特権じゃないかと思います。


もちろん、これをやるにはそれなりの実力が必要です。

俺の実力が何なのかってのは、これからおいおい語っていきたいと思いますが、

ホントに弱い奴がこんな事をやったら、それはただの痛い奴だと思います。



閑話休題。

ジムに、ちょっとかなりだいぶインテリジェンスの足りなさそうな

ボクシングかぶれのイレズミ野郎がおりまして、

彼にマススパーを誘ったところ、

「はぁあ?俺ボクシングやってるからよぉ、

キックの人が俺のパンチなんか貰ったら危ない~!」

とか言われた時には本気でどうしようかと思いました。

ちなみに、彼のパンチが手打ちなのを指摘したところ、

「だぁあ~~、これはこういう打ち方なの!」

とかムキになって反論されました。


仕方がないのでスパーリングで理解させようとしたところ、

3発ほど左右のミドルキックをかましたら、彼はもうビビって逃げ腰になって

蹴ろうとする素ぶりを見せただけで逃げるので

追いかけっこみたいになって、勝負になりません。

コイツ…悪いビックマウスです。

ただのヘタレが虚勢を張ってるだけです。


彼はそれ以来、オレとスパーリングになりそうなシチュエーションになると

何かと理由を付けて帰るようになりました。

それでいて、私に対する冷淡で無礼な態度は崩そうとしません。


彼が来る日は日曜日と決まっており、

その日は私はなるべくジムに行かないようにしています。


実は私はものすごく短気で根に持つタイプなので、

私の方から彼に喧嘩を吹っかけて問題を起こす可能性が多いにあるからです。

それは誰のためにも、ジムのためにもなりません。


私が引けば解決する問題なのであれば、そうすればいいだけの事です。

彼がその事を理解する事はないでしょうが、

僕は大人の対応ができるようになったと思います。

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