残像ーA1

イ「ごちそうさまでした」

ネ「いつ見ても見事な食べっぷりだなあ

  朝から普通の人の二人分は食べてるよ……」

マ「体型を維持できてるってことはそれだけ働いてるってことだよね

  もしくはもはや別の生き物なのか」

ネ「マクロンさんもめっちゃ食いますけどね」

マ「おん?」

ネ「……すいません」

イ「食べられるうちに食べておかないと

  死ぬときに変に後悔したくないし」

ネ「なんていうか、本能に忠実な生き方って感じだ

  羨ましくなるよ、俺にはとてもできない生き方だから」

イ「羨ましがるくらいなら飛び込んでみればいいよ」

ネ「いいよ、俺がやったって中途半端になるだけだ

  そういうのはイーリに任せるから」

イ「……」


グ「ちんたら食ってんなよ、始業時間だ、準備しろ」

マ「あ、はーいすぐ行きます

  じゃお二人さん、今日も頑張ってね!」

ネ「……不思議だよなあ」

イ「?」

ネ「グロキアさんがマクロンさんに変に優しいの

  マクロンさんもなんであんな人を慕ってるのか」

イ「……嫉妬?」

ネ「かもね、俺の思い違いなのかなあ」


イ「西部かあ……しかも昼から夜まで

  今日も暇そうだなあ」

イ「しかもここに来ると、なんか変な目で見られる……

  警備隊って嫌われてるのかなあ」

イ「ま、いいか 今日も頑張ろっと

  頑張れば明日もご飯食べられる、ってね」


イ「あれ、なんか騒がしい?

  走ってる人もいるし、何があったんだろ」

(音・銃声)

イ「!?」

フ「イーリ、ちょうどいいところにいた!」

イ「フェゼさん! 何が起こってるんですか、これ!?」

フ「銀行強盗……いや、立て篭もり事件だ

  銃で武装した集団が都立銀行を占拠したらしい」

イ「なら、早く行かないと!

  ぼさっとしてたら負傷者が出ますよ!」

フ「しかも……」

イ「?」

フ「マクロンが、中に取り残されてるらしい」



イ「バリケードで中の様子が見えない……

  交渉の状況は、どうなんですか?」

フ「膠着が続いてるな、困ったことにこちらの要求はほぼ全て却下らしい

  なんとか一般客は解放できたものの、銀行員とマクロンが中にいる」

フ「奴らの要求は一貫して過去の事件についての情報の開示

  加えてここからの逃走経路、それだけらしい」

イ「情報だけ?」

フ「そうだ、まあ金目当てなら立て篭もるなんて真似しねえわな

  銀行から金引き出してすぐ逃げる」

フ「とはいえ、事件が長引くほど俺たちの戦力は整う

  奴らに隠し玉でもない限り、長期戦は悪手だと思うんだが……」

イ「……夜」

イ「夜が来ることを、待ってる?」

フ「ん、それなら最初から夜に銀行襲うと思うんだけどな……

  まああちら様の考えが全く掴めない以上、頭の隅には置くべきか」


グ「おうお前ら、なに悠長にペラペラ喋ってんだよ」

イ「グロキアさん!」

グ「今回の事件はお前らの不注意だぞ

  給料引かれたくなけりゃ気ぃ抜かずに働け」

フ「副班長、作戦は?

  隊長から何か指示はあったのか?」

グ「……突入だとよ、多少の犠牲はしょうがないとさ」

グ「一般市民の人命より大事な情報だとよ

  いったい全体どんな代物なんだろうな」

イ「……」

グ「ま、隊長命令は絶対服従、さもなくば死だ

  駒としての職務を全うするしかねえか」

グ「さて、各自配置につけ、10分後に突入だ

  敵味方市民にかかわらず死人はできるだけ出すな、できるだけな」

フ「はぁ……やるしかねえのか、やるせねえなあ

  意識ある相手は初めて……じゃなかったか」

フ「気をつけてな、イーリ

  こんなことしか言えない自分を呪うよ」

イ「危なくなったら援護射撃お願いします

  背中は任せます!」



マ「」

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