10月
ダイエットハロウィン
あっという間に、10月になっちゃった。
9月は、なにかと忙しかったあたしとクマパンちゃんときつねこちゃん。
前半は、お月見予行演習だったし、お月見本番が終わった後半も、まんまるになった体型を元に戻そうと、お月さまといっしょにダイエットしていたから、やっぱり忙しかったんだ。
まあね。お月さまはね。
十五夜でまんまるお月さまになったって、いつものことだから、日を追うごとに順調にスリムになっていくんだけどね。
でも、あたしたちは、お月様のようには、うまくはいかない。
食欲の秋本番なんだし。いつもの二倍お散歩したら、食欲は三倍。三倍お散歩したら、食欲は四倍になるんだもの。
なんせ、食いしん坊の女王と王者と女帝なんだから。
ちなみに、女王はあたし。王者はクマパンちゃん。女帝はきつねこちゃん。
体重計をにらみながら、「今月こそは、ダイエット! 今日から、おやつは抜き!」と、あたしが固く誓ったところで、女帝が栗ご飯の大きな包みを抱えて、窓の外にやって来た。
「おっと、どっこい。そうはいかない。10月11日の十三夜さまのお月見に向けて、いざ予行練習!」
「えっ? きつねこちゃん、まだお月見予行練習するの?!」
「あったりまえじゃない、ミケちゃん! 9月の芋名月だけ練習して、10月の栗名月に練習をしないのは、片手落ちというものだわ!」
女帝は、力強く
9月の十五夜のお月見は、別名「芋名月」。
10月の十三夜のお月見は、別名「栗名月」。
「もしかして、昨日、窓のところに置いてあった栗って、きつねこちゃん?」
「うん。昨日は、ミケちゃん、留守だったでしょ。ほんとは、昨日から始めたかったんだけど、留守だったから、栗だけ置いて帰ったの。だから、今日は昨日の分まで、特訓よ!」
昨日は、あたし、ミツバチのアピさんのところにお手伝いに行っていたんだ。
あたしは、思わず、つぶやいた。
「ごん、お前だったのか。栗をくれたのは……」
食欲の王者クマパンちゃんが、きつねこちゃんの横からニュッと顔を出した。
「ミケちゃん、ダイエットのしすぎで、頭に栄養回っていないんじゃないの? 栗を置いていったのは、ごん狐じゃなくて、きつねこちゃんだよ」
王者も、
「無理なダイエットは、禁物だよ、ミケちゃん! はい、猫のお菓子屋さんの栗のロールケーキ!」
これから、十三夜さまのお月見まで、きつねこちゃんとクマパンちゃんは予行練習のために、毎日、栗を持ってやって来るのだろう。
焼き栗、甘栗、栗きんとん、マロングラッセ、モンブラン。栗ぜんざいに渋皮煮、マロンパイに栗羊羹。エトセトラ、エトセトラ。
「ミケちゃん、ダイエットは、いったん中止だよ! ダイエットなら、十三夜も過ぎて、そのあとの満月が終わってから、お月さまといっしょにすればいいさ」
「そうよ、そうよ」
と、クマパンちゃんときつねこちゃんは、言うんだけどね。
「王者と女帝、おふたりにおたずねしたいんですが、たしか、ハロウィン用お菓子のお味見係のアルバイト、猫のお菓子屋さんでするんじゃなかったんでしょうか、あたくしたち」
「そうよ、女王。十三夜さまのお月見の11日から、ハロウィンまでの三週間ね」
「試食のお菓子食べ放題だなんて、楽しみだよね〜! きつねこちゃん」
「ね〜! クマパンちゃん」
猫のお菓子屋さんのハロウィンのお菓子はね、毎年、子猫たちがいたずらするのも忘れちゃうくらい美味しいお菓子なの。
子猫たちのことだもの、お菓子をあげたって、いたずらするでしょ?
だから、お菓子屋さんでは、いたずらさせないために美味しいお菓子の試作を三週間前から始めるの。
子猫たちだって、だんだん舌が肥えてくるし、いたずらするのは仔猫の
ハロウィンのお菓子は、毎年、お菓子屋さんと子猫たちの戦いなのよ! 文字通りの甘い戦い!
そのお菓子のお味見係のバイトに応募したら、3にんとも、今年はめでたく採用になったの。
去年は、バイトしなかったから、10月31日までにダイエットが間に合って、ハロウィンの衣装が着れたのに。
ほら、この写真、見て!
あたしたちの仮装、決まってるでしょ!
だあれ?!
バイト代で、新しい衣装買えば良いって、言ってるの?
さんにん、そろって、まんまるお月さまの仮装なんて、いや!
今年の10月31日のお月さまは、三日月なのよ。
どうせ、お月さまの仮装をするなら、三日月でしょ!
それまでに、お月見予行練習やお菓子のお味見バイトしながら、三日月くらいスリムにダイエット……。
ああぁ〜、ぜったい、無理!!!!
三毛猫 ミケ
***
そうはいっても、十三夜さまはもちろん、お月見予行練習も、お菓子屋さんのお味見係のアルバイトも楽しみで仕方がないミケちゃんなのでありました。
やっぱり、今年の仮装は、まんまるお月さまになりそうですね。
暴飲暴食も、無理なダイエットも、体に負担がかかります。
何事も、ほどほどに。
実りの秋を、みなさんも、心行くまで楽しんでください。
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