第182話 ショッピングセンターの開園

 ショッピングセンターはテーマパーク程の広さがあり、店舗エリア、競技エリア、宿泊・慰安エリアとなっている。

 店舗エリアは飲食店やスーパー、洋品店、呉服屋などからなっている。珍しいものではクリーニング屋なんてのもある。

 競技エリアは、競技というより、芸能を披露する方に近い。

 移動式のステージがあり、歌やダンス、演劇などが行える。もちろん競技に利用することも可能だ。

 宿泊エリアはホテルに旅館、それに温泉がある。

 これらにはマッサージなどのリラクゼーションも整えてあるので、癒しには最高だ。

 このショッピングセンター最大の特徴は一部だけだが、屋根がある。

 これも高炉で鉄骨が作れるようになった賜物であり、鉄骨が重い屋根を支える事で広いエリアに屋根を取り付ける事が可能になった。

 そして今日は、ショッピングセンターのお披露目と祭りを一緒にした、オープニングセレモニーだ。

 午前中に開園の式典を行い、午後から一般開放とした。

 これに合わせ、王国中から観光客がキバヤシツアーで来ている。

 ホテルや旅館も全て満室で、オープンしたショッピングセンター内を観光客が行ったり来たりしている。

 午後には競技場への立ち入りが解放されたので、ステージ前に席を取りたい男共が集中し、パニックになっている。

 街中広場では酒を振舞っていた店主が居たが、まさかこんな所まで、酒樽を持って来るやつはいないだろうと思っていた、俺の考えの方が甘かった。

 酒樽を満載した荷車が、数台競技場に入ってきては、中に居る人たちに酒を振舞いだした。

 大人たちは完全に出来上がっている。

 そんな中で、祭りが開始された。

 この競技場では仕掛けがいくつかある。

 それは地下があり、この地下を通っていろいろな準備ができる。

 これはローマにあるコロッセオを参考にして造ったからだ。

 もう一つ、投影スクリーンがある。

 現代では、競技場や野球場には大きな映像ビジョンがあるのが普通だが、この世界ではそれは無理だ。

 そこで考えたのが、ミュの持っている水晶を利用する方法だ。

 撮影用の水晶でステージを撮影し、もう一つの水晶に映像を出す。

 これだと、見れても5人だ。とてもでないが、5万人もの人が見れない。

 そこで、その水晶の裏側から強い光を魔法ランプで灯火する。

 灯火で映し出された映像をガラス技術で作ったレンズが拡大して競技場に設置したスクリーンに映し出すという仕組みだ。

 ただ、このスクリーンは丸形なのは仕方ない。

 そのスクリーンに、最初の大道芸人たちが映し出される。

 本人たちも自分に向かって手を振ると、スクリーンの中で手が振られている。

 そして、大道芸人たちの芸が始まった。

 ただ、撮影用の水晶が1つだけなので、現代のようにいくつもの映像を切り替えて映す、というようにはいかない。

 撮影用水晶は三脚の上に置かれ、カメラマンがその三脚を移動して撮影している。

 三脚はレールを引き、その上を移動するので、移動しながらの撮影に問題はない。

 この水晶は拡大できないので、水晶の前に拡大用レンズを出して映像を拡大するという技を使っている。

 どのような映像を見せるかは、カメラマンの技術に寄るところが大きい。

 大道芸人が終わると、演劇になった。

 演劇は今までやっていなかったが、芸能志望の子供がいるので、今年からやってみる事になった。

 題材はシンデレラだ。

 この脚本を作ったのはエリスで、芸能関係はエリスがなかなか上手い事やってくれる。

 その事をエリスに言うと、

「この私の伝説が、日本では『アマノウズメ』になったしね」

 なんて、言っていた。

 そうだったのか。エリスよ、お前は天岩戸の前で裸踊りをしたのか?

 シンデレラは、この後のエンターティメントの前座の位置づけだったが、なかなか好評だった。

 最後にハッピーエンドで終わるものは、胸にこみ上げるものがある。

 そして舞台が変わり、次に出てきたのは、学院の体操部の選手たちだ。

 体操と言っても、現代の体操というよりはサーカスの方に近い。

 球乗り、火の輪くぐり、鉄棒を使った技もある。

 そして一番の目玉は、やはり空中ブランコだろう。

 見ていてひやりとするものがあるが、観客たちは拍手喝采だ。

 このサーカスではピエロが出ている。そのピエロはポールだ。

 ポールはいつもは固い、真面目という印象で、どちらかと言うと、愛想がないとも受け取れられるが、この場では大いに笑いを採っていた。

 後で聞いたら、まんざらでもなさそうな言葉が返ってきた。

 次はいよいよ、『サクラシスターズ』と『トウキョーボーイズ』だ。

 会場のボルテージも一気に上がっている。

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