第3話お披露目
いよいよ、演奏会の日がやってきた。校内のけやき広場という所で、昼休みに演奏する。初めての演奏会なので、当然新入部員たちは緊張していた。早弁(昼休みより前の休み時間にお弁当を食べる事)をして、昼休みになると急いでけやき広場へ行った。そして椅子を並べ、楽器を持って座る。桜田先生がにこやかに、そして軽やかな足取りでやってきた。桜田先生は生徒の母親くらいの歳だが、サバサバしていて威勢がよく、男っぽい性格だった。だが、いつもノリノリでダンスをするように指揮を振る。今日も登場からノリノリだった。
「さあ、諸君。本番よー!頑張っていこう!」
と言ってみんなの前に立った。和馬は右手と左手と交互に握ったり開いたりした。交互なのは、トランペットを持ち替えているから。指が上手く動かない気がする。
先生方が聴きに来てくれた。校長先生の姿もあった。演奏が始まる。生徒たちは通り過ぎるだけだが、わりと興味津々に顔をこちらに向けながら通り過ぎる。
演奏は無事終了。
「緊張したー。」
一年生たちは皆思い思いにそう口にしたり、口に出さなくてもため息を吐いたりした。そして皆笑顔。和馬は、全員で何かをやるっていいな、勝ち負けではなく、一生懸命にやるのっていいな、と思った。
3年生はこれで引退だ。音楽室へ楽器を運んで、そこでお別れの握手をした。
「先輩、受験勉強頑張ってください。」
と、次の部長になる遠野先輩がそう言って締めくくった。部活2年目なのは遠野先輩一人となってしまった。3年生は、
「なんだあ、みんな心細いって顔してんなー。」
と言って笑った。
「しっかりやれよ。」
と、一年生の何人かの頭をなでる先輩もいた。
「はいっ。」
一番小さい牧瀬は、少し背伸びをして答えた。
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