第23話 にじゅうさん
「いいかげんにしてよ!」
さゆみが大声で怒鳴る。大基は何を怒られているのか理解できず、きょとんとする。
「二言目には百合子さんが、百合子さんがって! そんなにあの女がお気に入りなら、彼女の部屋に住めばいいじゃない!」
大基はフッと笑って、言う。
「なにを怒ってるんだよ。オレと百合子さんは、そんなんじゃ……」
「そんなんじゃないなら、なんだっていうのよ! はっきり言いなさいよ!」
さゆみは大基の胸倉をつかまんばかりの勢いで叫ぶ。大基は途方にくれる。
そんなん、でないことだけは、はっきり言えた。しかし、では何なのかと言われると正直、大基にもよくわからない。産まれて初めて経験する感情で、関係だった。
とにかく大基は百合子にすべてをゆだねていた。それは間違いない。
「……さいってー」
答えられない大基に、さゆみは冷たく言い放つと、部屋から飛び出して行った。
遠ざかって行くハイヒールの足音を、バタン、と扉が遮る。
大基はぼんやりと、閉まった扉を見つめていた。
なぜか、トイレの前の廊下がギシっと大きな音を立てた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます