ルルイエの遺書
海土竜
第1話 邪神
地球は既に侵略されていた。
頭から生える触手は、ぬらぬらとうねる軟体生物のようで、鎌首をもたげる蛇のようでもあった。人間の恐怖と絶望を具現化したような、言葉にも出来ぬほどの醜悪な姿をした、邪神クトゥルーによって……。
「この星のゴミどもを根絶やしにしてくれようぞ……」
邪神の……、深淵から響く……、高笑いが聞こえる。
地球は、既に、侵略されていたのだ!
見た者を恐怖と絶望の縁に追いやり、狂気に駆り立てさせる、邪神……
「クトゥルーなのです」
頭から緑色のぬらぬらした触手を生やした、見るもおぞましい姿、まさしく、邪神クトゥルーであった。
「侵略基地を作るのです。ここは、木に囲まれて人間が入ってこれないのでちょうどいいのです」
クトゥルーは基地を作り始めた。
何も知らぬ人々が住む街の、直ぐ側で、人類に気づかれぬまま、侵略の魔の手が迫ろうとしていた!
だが、その時、木々を揺らしてクトゥルー基地に近づく影が。
「グルルー」
全身から毛を生やした、凶悪な獣。
野犬だ。
それも、ただの野犬ではない!
柴犬、
首輪に、そう、書いてあった。
「何でもいいのです。この星の下等な獣なのです」
クトゥルーの触手が、ぬらぬらと揺れ動き、真っ赤な口を開けて舌なめずりをする。
「丁度お腹も減っていたのです。この基地に来たのが運のつき……、食物連鎖の頂点に立つ、邪神クトゥルーの供物になるのです!」
無数の触手を振り上げ、邪神が野犬に襲い掛かる!
「クキューー」
クトゥルーの立つ頂点は、右下だった。
「バウバウ、ボリボリ……」
邪神クトゥルーは犬に食われた。
だが! もう一度言おう。
地球は、既に、侵略されていたのだ!
こうしてキーボードを叩く私も、既に、虚ろに濁った目をして、ぬらぬらした鱗の生えた皮膚を持つ怪物であるのかもしれない……。
そして、……君も。
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