診察室で夫婦の話をしちゃあダメ

定期健診

 ふうたんは肺炎になって入院した時に、喘息の発作も出たので、定期健診に行ってお薬を貰ってきている。


 今日も、面倒くさい病院の定期健診の日。

 「行きたくない。」

 と言いながら、靴を履いて、てっちゃんが運転してくれる車の助手席に座った。


 病院に到着して、受付を済ませ、待つ。

 待つ、待つ、待つ。


 「足立さん。5番の診察室にお入りください。」

 「お!やあっと呼ばれた。」

 てっちゃんも付き添いでふうたんと一緒に診察室へ入った。


 「調子はどうですか?」

 お医者さんが、ふうたんに尋ねる。

 そうしたらふうたんが、調子についてけたたましく語り始めた。


「この人、この人てっちゃんっていうんですけど、てっちゃんは、会社から帰ってきてから、お風呂に入ってご飯を食べ終えると、テレビを見るんです。

 それで、

 月曜日は、きまって、

 ”お試しかっ”

 をつけるんですけど、

 しばらくすると、リモコンをかちゃかちゃいじりはじめて、ほかの番組をひとまわりみてから、

 「なんもやっとらんなぁ~・・・」

 って、お試しかっに戻すんです。毎週ですよ。

 だったら最初から お試しかっ をつけときゃいいと思いませんか?野口先生。」


 てっちゃん、気まずそうにしながらも、小声で、

「ふうたん、調子はどうですかって、喘息の調子を言うんだよ。」

 とふうたんに言った。


 主治医の野口先生は、

「はぁ~、ほんで何い。調子はどうだ。」

 と、ふうたんに聞いた。


「そういえば、昨日会社から帰ってきたとき。

『会社でチョコパン買ったら、なかジャムパンだった!どうゆうことや!』

 って30分くらい言ってました。」


 野口先生、

「誰があ。」

 とふうたんに聞く。


「この人、てっちゃん。じいさんやと思いませんか?」


「まあ、ええわ。元気ってことやね。お薬いつも通りでいいね。はいもういいよ。」


 診察室を出て、スッキリとした顔をしているふうたんと、ブルー入ってるてっちゃん。

 2人の温度差は、計り知れない大きな差であった。



 帰りの車の中で、てっちゃんため息まじりにふうたんに言う。

「ふうたん、病院で調子を聞かれたら、僕の調子を話すんじゃなくって、ふうたんの身体の調子を話すんだよ。野口先生困らせたらあかん。」

「へ?野口先生なんか困るようなことでもあったのかね?」

「…。」


 次回の定期健診は、診察室に入る前に、ふうたんの調子をメモした紙を用意して、それを渡して受診させよう。

 そうとだけ思うてっちゃんなのであった。


 ―「寝ぼけてなくても、寝ぼけてるより酷いこと言うんだ。」

 こんな感じのショックを受け続けて早十数年のてっちゃん。こんなのに慣れてるてっちゃんジョブズは、やはり、ふうたんジョブズ菌にやられているのかもしれない。


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