三日目⑨
キョウがデジカメを持っていたからなのか。ホテルが手配したタクシーの運転手は、フォトスポットで停車してくれた。チャンティリー橋からは、アジアパークにある、サンホイールと呼ばれる観覧車がみえる。
「んー、あれって見覚えがあるような」
サクヤは、目を細めて見つめる。ベトナムに来たのは初めてなのに、懐かし佐を憶えてしまうのは何故だろう。
「なんかあるよね」
トモは困った笑みを浮かべながら首を傾げている。
運転手の話によれば、かつて日本の遊園地にあった観覧車らしい。それを聞いたサクヤは、まさかとつぶやきかけて口を閉じ、大きく目を見開いて声を上げた。
「あー、あれっ、びわ湖タワー遊園地のだ。どおりでみたことあると思った」
「すっごーい、サクヤちゃん。乗ったことあるの?」
カコの問いに迷わず頷く。
「乗った乗った。解体されてベトナムへ嫁入りしたってニュース、そういえば見たな」
一九九二年に滋賀県大津市に完成したイーゴス108は、「すごーい」の逆でイーゴスと名付けられ、高さが百八メートル。当時は世界一の高さを誇った観覧車だった。その後二〇〇一年、びわ湖タワーが閉園となり、観覧車も役目を終えるはずだった。
所有者の熱意で解体されず残ったイーゴス108は、二〇一三年にベトナムに輸出され、二〇一四年にベトナムダナンで『サンホイール』として復活したのだ。
ダナンでは、土台となる建物の高さを合わせて百十五メートルとなり、世界第四位を誇る観覧車となっている。
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