紫帝華伝

六華

第1部 帝家之歴史

稀代の名君が幼き頃に…

第1話 皇子降誕

遠い昔。紫鳳国という国があった。

「殿下…いえ、大家。大家の御世が幸多く永久に続きますよう、お祈り申し上げます。」

「ありがとう、彩結サイユウ。では…行こうか、皇后よ。」

賢王と慕われた暎帝エイテイ紫豊隴シホウロウが即位して3年がたった。皇后の瀏彩結リュウサイユウとの間に第一皇子が誕生した。

「彩結、よくぞ健康な皇子を生んでくれた。しかと体をいとえよ?」

「えぇ。可愛らしい吾子ですわ…。豊隴様、名は御身がおつけくださいませ。」

ランと名付けようかと思うのだが…どうであろうか?」

「瑞鳥の御名でございますか。良き名でございますね。」

「左様か!鸞よ、良き子に育てよ?母を支え、国を統べる賢王となれ。」

暎帝は優しい父の顔で笑った。

「鸞、父上の助けとなりなさい。名の由来である瑞鳥のごとく御世に幸を運ぶ方になることを祈ります。」

すると、部屋の扉の方から皇后の住まいたる紫蓮宮シレンキュウの女官長である香鈴コウリンが声をかけてきた。

大家たいか娘子じょうし。恐れながら妃嬪の皆様がご挨拶にいらしております。」

暎帝は彩結の手をとり立ち上がらせた。

「鸞を皆に会わせようぞ。」

応接間に行くと拝礼している妃嬪の中から四妃最高位のエイ貴妃が進み出て言った。

「皇子殿下の御降誕、お慶び申し上げます。」

「ありがとう、栄貴妃。皆も皇子の祝いのために集まってくれたこと、嬉しく思います。」

そこに集まっていた妃嬪達は唱和した。

「お祝い申し上げます、大家、娘子。皇子殿下の千歳をお祈り申し上げます。」

「大儀である。皇子の名は鸞。生に幸多からんことを。」

皇子の妃嬪への対面を終えた。

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