ねこのみずうみ

焼け焦げたドルフィンのいた 砂漠の片隅で 煙草を吸った

僕たちは灼熱の湖の中 溺れきれずに ちょっとだけ歌った

雨はあらかじめ決められた範囲を被い 

昨日の海の底で あなたたちの還るのを待っている

わたしはあんたを食い物にして ちょっとした優越感に浸ってる

猫は帰る場所をなくして 小鳥になった

小さい女の子は 魔法の薬を飲んで女になった

小さい男の子は めぐすりの木を見つけて 魔法をすてた

タッパーいっぱいに詰め込んだ キャンディーはもうなくなりそうだ

このまま歩いてどこに行こう

このまま歩いて 窒息死

死んだらみんなほしになる そしたらみんな輝ける

死んだらみんなちりになる そしたらみんな繋がれる

ちょっと遠くに来てしまった 引き返そうか

それとも もっと遠くに行こうか 

かなしいな さびしいな とびたいな しにそうだ

檸檬がほしいと智恵子はいった

わたしは檸檬だけじゃなく 愛情もほしい

智恵子は欲がないから美しい

わたしは欲張りだから 泥の中で眠っています

正常から 光速で異常の世界に放りだされる恐怖を 知っているか

頭が ぐるぐるしだしたら最後 私は発狂しないように 深呼吸

わたしはもう慣れたから たぶん大丈夫

アメリカの砂漠には ドルフィンなんていなくて

わたしはちょっとした絶望の中 雨が降って 生きていると感じた

湖には朝と夜が同居していて あさひの横には ふたつの月

あれは夢じゃなかった ソルトレークの片隅にも 現実があった

ぼくは小さい時 大人だったから 今はちょっと少年なんだ

わたしは女の子だったから 今日からはお爺さんなんだ

猫は小さいから沢山かばんに詰めた 詰めれるだけ詰めた

鬼の女に見つからないように あいつは猫が大好物

わたしみたんです 猫が詰められた小さな巾着袋を川に捨てる女を

わたし こわすぎてちいさすぎて ねこをすくえなかった

大丈夫 なみだはきっと 猫を救えるよ

大丈夫 悲しみはきっと届くから

死んだらみんなほしになる そしたらみんな輝ける

死んだらみんなちりになる そしたらみんな繋がれる

死んだらみんな む になる

死んだらみんな 忘れ去られる それもまた うつくしい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る