ある日の一生

     蝶は舞い

     彼女の 涙の雫は 海へ落ち

     汚れた王子は 朝の憂鬱を知らず

     凍える国は 悲しみで 溢れていました

     夕暮れも近くなり

     人々が 隠れ家へ 帰り始める頃

     一生を支配する王様が 言いました


         美しいものが死ねば 

            沢山の者が悲しみ

         醜いものが死ねば

            誰一人悲しまない

         今日は 凍える国の 唯一の

                皆の光

         悲しみの 女王を連れて行こう


     家来たちは 悲しみました

     女王は 悲しみの国の

     唯一の 希望の光

     しかし 王様の決めたことは

     もう 決まってしまった事なのです

     悲しみの 女王は

     蝶に姿を変えられ

     女王は 世界を迷い

     春の日差しの中を 飛び回りました

     凍える国の 住人は

     嘆き悲しみ

     力なき人々は 倒れこみ

     海の中の 氷となり

     まだ誰も見たことのない

     底の底へと 沈んで

     宝石になりました

     その時 悲しみの 女王は

     初めて知った 春の暖かさの中で

     心躍らせ

     花の香りの中を 飛び回り

     悲しみの国や

     凍える住人の事を 忘れてゆきました

     自由になった 女王の翼は

     春の風に委ねられ

     その時

     女王の命は

     人間の国の クルマ と言う物体にぶつかり

     ガラスに 全てを置き去りにして

     奪われていったのでした

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