code-5-2:山の主
「ここは私の土地よ。一体誰の許可を得て入ってるの」
声からして若い女性、というより女の子だ。そして発言から少なくとも追っている敵ではないとわかり少し安堵する。こんな不意討ちみたいな出会い方をしていたら最悪だ。
「あ、いやー、実は人を探してたら迷っちゃってね…」
「人探し?」
少女は木の上から飛び降りクルセイドの前に着地する。
「そんな完全武装みたいな格好でただ人探しなんて、絶対あり得ないわ。あなたなにか隠してるでしょ」
少女はクルセイドの体に顔を近づけジロジロと眺めながら言う。
その少女のぱっと見の特徴は綺麗な顔立ちに長めの金髪、雰囲気は大人びているが顔つきからはまだ幼さが抜けていない。
「こりゃちょっとワケ有りでさ、ところで君こんなところに一人で…ん?」
遠くから微かに人間の足音がする。電波障害が起こっても強化された聴覚は健在のようだ。
「また誰か来たわね」
「ああ、多分…なんでわかるの?」
「勘よ、こういうところで生活してるとなんとなくわかるようになるの。あなたこそなんでわかるのよ」
「ちょっと耳がいいんだ。それより、あれは多分俺が探してた奴だ」
話していると、暗がりの中から人が出てきた。手にはアサルトライフルを持ち、全身を白い装甲とヘルムで防護している。
「お前がXだな。聞いたぞ、第5開発室から逃げ出したそうだな」
こいつがcode-Dで間違いなさそうだ。どうやら即座に始末というつもりではないらしい。
「ちょっと!銃持ってるじゃない!あんなのが探してた相手なの!?」
「どうやらそうらしい。下がって、今のあいつの目的は俺だけだ」
「行くぞ。大方術後で混乱でもしてたんだろう、今ならボスもお許しなさってくれるはずだ」
「悪いが、俺はシラフだぜ。そもそも酔ってたってあんたらの言いなりにはならねーよ」
「そうか、残念だな。始末するのはそこの女だけでいいとおもってたんだが」
そう言いながら男は銃を構える。
「あんたら私の土地で揉め事起こす気なの!?」
「まあ、そういうことだ。どこかに隠れて」
相手の攻撃に備えて自分もヘルムを装備する。
「そういう訳にはいかないわ。あんたらが暴れるならこっちにだって考えがあるわよ」
少女は背中に担いでいた弓を手に取り、Dの方向を向いて矢を番える。
「そんなもので俺の装甲に穴を開けられるとでも思ってるのか?」
「思ってなきゃこんなことしないわ…よっ!」
少女は番えていた矢を放つ。普通に考えればあの重装備にそんな攻撃が効くとは思えない。男は余裕をかましてその場に棒立ちになっていた。
だが、予想に反してその矢は男の腕に突き刺さった。
「なっ…!」
「ね、ざっとこんなもんよ。片腕さえ潰せばあんなでかい銃うてっこ…」
「いや!伏せて!」
クルセイドは少女の頭を乱暴につかみ地面に伏せさせる。
「ちょっと!いきなりなにす…」
次の瞬間、男がクルセイドと少女に向かって両手で銃を構え弾をばらまいてきた。
「嘘!なんで動かせるのよ!」
「こんなちゃちな矢で装甲を貫通できた理由はわからんが、俺を普通の人間と一緒にしてもらっては困るね。少しラグはあるがしっかり動くぞ」
「あいつはMHだ、ただの人間と思っちゃいけない。わかったら下がってくれ、ここからは俺の仕事だ」
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