軒下で芽生え、落ちる

 天気予報が外れたので、恋をした。


 明日は一日中雨、時々止みますが、日射しは届かないでしょう。

 キャスターの声を背中で聞きながら、明日天気になあれ、と軒先にぶら下げられたわたし。

 わたしを見上げる顔は、期待よりも不安の方が大きい。無理もない。わたしは期待をことごとく裏切ってきたから。あの子の期待を一身に受けて夜通し祈っているのだけど、あいにく祈りは通じない。

 このままではそのうち行き着く先はゴミ箱だ。明日こそ、どうか。

 窓ガラス越しに、今日最後の天気予報が聞こえる。明日は朝から雨、一日中断続的に降り続けるでしょう。

 空より先にわたしが泣き出しそうである。


 翌朝、勢いよくカーテンが開いた。わたしを見上げる顔は、朝日でいっそう輝いて見える。あの子のそんな顔を見るのは初めてだ。

空に負けないくらい、わたしの中が晴れ渡ってくる。

 軒下からわたしを下ろし、優しく包み込む小さな手は温かい。この手のために、また頑張ろう。


書き出し:天気予報が外れたので、

https://shindanmaker.com/931629


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る