書き初め

 年が改まって最初の市は、毎年大賑わいだ。

 今年一年の幸せを求めて、まじない師の店にも多くの客が訪れる。呪い師がその年初めて書く護符は、特に効果があるとされるのだ。

 ゆえに人気の呪い師の店先には、書き初めの護符をもらおうと前の晩から待ち構える者がいるほど。たとえ書き初めが得られなくとも、二番目、三番目でもそれなりの効果があると、並ぶ者は絶えない。

 駆け出しの呪い師にとって、最初の市は試練の場。暇を持て余して、何度も手を擦り合わせる。

「幸運の護符を一枚くださいな」

 初めての客に、息を呑む。一番人気の呪い師がそこにいた。

 震える手で書いた護符を渡すと、

「良い一年を」

 書いた方に幸運が訪れそうな笑顔が返ってきた。


※299字

※毎月300字小説企画参加作品、第1回お題「初」

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