宝島

 人々の望むものがそこにはあるという。どんな宝でも願いでも、欲しいものは必ずある。

 数多の人々がそこを目指して旅立ち、誰一人、帰らなかった。

 それでも、なんとしても手に入れたいものがあれば、目指してしまうのだ。

 うねる波を乗り越え、竜が支配する海を通り抜け、山のような氷の隙間を縫って。


「ようこそ、妾の島へ」

 待っていたのは、一人の少女。彼女は扇子で洞穴を示す。

「貴方の望むものは、あそこに」

 夢見るような心地でそこに向かい、立ち尽くした。

 洞窟の中は氷に覆われ、その中には数え切れないほどの人、人、人――。

「皆ここで、望みが叶った夢を見続けるの。さあ、あなたも」

 優しく背中を押され、刃のような冷たさに包まれる。


※299字

※Twitter300字SS参加作品、第80回お題「宝」

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