61~70
川の主
夏休みは山奥 に住む祖父母に預けられ、飼い犬を連れてよく川へ散歩に行っていた。
ある時、川の冷たい水を楽しんでいた犬が急に何かを追いかけ始めたので見てみると、一匹の黒い鯉が泳いでいた。頭に白く大きな斑点がある。犬を窘めると、鯉は川の深い方へ泳いで消えた。
その後も毎年、斑点のある鯉は姿を見せた。当時小学生だった私なら、一抱えありそうな大きな鯉で、きっと川の主だと祖父母は言った。
中学生の時、梅雨の大雨で祖父母の住む集落も大変な被害を受けた。
夏休みに訪ねると、川の様子はすっかり変わり、主の姿なかった。
意気消沈したその夜、夢を見た。
晴天の空を泳ぐのは、額に白い斑点のある黒い竜。
私は犬と、それを見ていた。
※300字
※Twitter300字SS参加作品、第67回お題「泳ぐ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます