地平面探査

夜空は遠くどこまでも蒼い

赤いランプの車列が続く

先端ではきっと Betelgeuse が

自らの外惑星系を飲み込んだのち

すでに重力崩壊しているはずだ

それを僕たちが見るのは

明日のことかも知れない



僕はむせ返るような甘い香を焚き

A whiter shade of pale を流す

50年も昔のダルいロック

サイケデリックなオルガンに

意識は大宇宙を包括し始める

ピースをふた箱も空け

カウチの背の染みをなぞる



あのとき

きみが何を考えたのか

性能の悪い測距儀と空中線

いつか目に見えて起こることは

見えないうちから起こっている

わかっていながら

僕は拾い上げなかった



きみを知った次の朝

見るものすべてに感じた jamais vu

信号の明滅にさえ

新しく気持ちを躍らせた

公園を抜けるあいだのささいな時間

起承転結の順序を守るのなら

deja vu に気づかなければならない

シュバルツシルト面を超えて

落ち込んでゆく欠片に

カウチに寝そべり手を伸ばした



探査船は燃料切れ

重力につかまり

あてなく彷徨うことも許されない

暗く四角い箱のなかで

動かない雲を振り払い

重力の作用を直接に感じる



きみといた時は

なにもかも明るく見えたのに

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