ハイブリッド・ニート ~ 二度目の高校生活は吸血鬼で
於田縫紀
プロローグ
第1話 二度目の高校生になった訳
「という訳で本年からの転入生の2人よ。1人は……」
隣の隣で女性教師がそう言って俺ともう1人の女の子の紹介をしている。
そして好奇心と冷めた目とまあ色々な視線で俺達の方を見ている視線が33人分。
まあ空いている席もあるけれど。
男女比はほぼ半々か。
「それでは簡単に自己紹介をお願いね」
と言うのでまずは隣の小柄な女の子が軽く頭を下げる。
「綾瀬美久と言います。宜しくお願いします」
それだけ言って頭を下げる。
それだけかよ、と思いつつも短い方が俺にとっても都合がいい。
なのでそれを倣って俺も頭を下げ、口を開く。
「佐貫龍洋です。どうぞ宜しく」
それだけ言って軽く頭を下げる。
「それでは2人は席について。綾瀬さんは右側窓際の一番前で佐貫君はその後ろ。それでは第1回目のホームルームを始めるわよ」
今言われた席に向かいながら俺は思う。
何でこんな事になったんだろう。
まあ実は理由ははっきりしている。
原因をおっかぶせるべき人物も確定している。
そう、全ては俺の親父のせいだ。
奴が20年ぶりに俺の前にやってきた時。
あの時から全てが始まったのだ。
◇◇◇
その日もそれまでの日々と同じように、俺はマンションの部屋に籠もってオンラインゲームに勤しんでいた。
カーテンはここ数年開けたことは無い。
ゴミを最後に捨てたのは10日前だったかな。
掃除はいつやったのか記憶すらない。
俺は無駄なことはしない主義だから。
俺、無職の36歳。
引きこもりにしてニート様だ。
高校の途中で不登校になり退学。
以降は鋭意自室警備に勤しんでいる。
家族は一応親父がいるらしい。
母親は記憶にも記録にも存在は無い。
住民票だの見ればわかるだろうけれどきっとその名が本当かすらわからない。
そして親父にはここ20年会ったことは無い。
電話すらもした覚えは無い
ただ奴はクレジットカードを置いていったので、生活には全く支障は無い。
食料が無くなったらネットスーパーで配達して貰えばいい。
このマンションは分譲だから家賃は無い。
共益費水道代電気代町内会費その他は親父の口座から勝手に支払われている。
つまり生きていくだけなら簡単だ。
無論この生活にも弱点はある。
親父がクレジットカードを止めたり死んだり収入が無くなった場合。
その時俺のライフラインは一気に途切れる。
そうしたらどうするか。
生活保護でも申請するか。
いやそれも面倒だ。
いっそそのまま飢え死にしよう。
そんな決意の元、今日もたっぷり課金した最強キャラで獲物を狩りまくる。
そんないつもと変わらない日だった。
大物狩りの最中にインタホンのチャイムが鳴る。
俺は無視する。
こんなニートの家を訪れるのは宗教かNHKか押し売りか。
どちらにせよろくなもんじゃない。
だから出ない。
俺は余分な事はしない主義だしな。
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