お茶会特別ゲスト!

「お邪魔していいですか?」

 声の主は光る君のご子息、夕さまでございます。宮中のお仕事からお戻りのようでございます。紫子さまがこちらにどうぞ、と招き入れられます。

「母さん、ただいま」

 夕さまはスマートに御簾内に入っていらっしゃいます。 

「お帰りなさい、夕くん」

 花子さまがお迎えになられます。


「夕くん、お久しぶり」

 紫子さまもお声をかけられます。

「さきさん、お邪魔します。こんにちは」

 パレス六条に引っ越してきてから花子さま以外の方々とも夕さまは交流をもたれていらっしゃいます。紫子さまを「さきさん」とお呼びになっていらっしゃいます。


「夕くん、また大きくなったわね」

 明子さまでございます。

「きこさんもこんにちは」

 こちらは「きこさん」とお呼びになられます。


「ホントに光さんにそっくりね」

 明子さまは眩しいばかりの笑顔の夕さまに見惚れます。

「若い頃の光くんそのものだわ、ねぇ? 花子さま」

 紫子さまも何度も首を縦にお振りになっていらっしゃいます。

「本当にそうね。ますます似てくるわね」

 もちろん花子さまも同意見でございます。特に花子さまは夕さまの年頃の光る君をご存知ですからなおのこと懐かしいことでございます。


「夕くんも一緒にお茶しましょうよぅ」

 紫子さまがSKJに夕さまのお席とお飲み物を用意させます。

「そうよ、そうよ。お話しましょうよ」

 明子さまもいそいそと夕さまのお座りになるスペースをお作りになられます。

「『月刊宮中ニュース』のお姿ステキだったわ」

 宮中の出来事を紹介している月刊誌ですが、あまりの夕さまの人気に今では「今月の夕くん」というコーナーが作られました。おまけに今月号は例の花見の宴の春宮さま&夕さまの舞が巻頭カラー特集で掲載されました。都中の女子たちが1部は観賞用、1部は切り抜き用、1部は永久保存版、1部は保存版のスペアだのとこぞって購入したため歴代最高の発行部数を記録したんだそうでございます。


「僕は春宮さまの引き立て役ですよ」

 夕さまはそう謙遜なさいます。

「なに言ってるの。イケメンがふたり揃ってるから素敵なんじゃない」

 明子さまがおっしゃいます。

「それに春宮さまには愛しの秋子しゅうこさまがいらっしゃるけれど、夕くんはフリーでしょ。女の子たちにモテモテなのは夕くんよ」

 紫子さまもそうおっしゃいます。

「そうね。わたしたちも見たかったわ」

 ほほほほほ、と皆さんに相槌をうちながら花子さまがおっしゃると、

「「ほんとね――」」

 と紫子さまと明子さまが口を揃えられました。

 

 若い色の桜の葉が風に揺れ、淡い影がさわさわと踊ります。


「それはそうと夕くん、何かお話でもあるの? ヴィレッジすぷりんぐにまでいらして」

 ふと花子さまが夕さまにお尋ねになられます。

「そうなんだ。母さん、僕職場に籠って昇格試験に備えるんだ。しばらく戻ってこないけれど心配しないで」

 夕さまは飲んでいたカプチーノのお茶椀を元に戻されます。

「そうなのね。試験にはもちろん受かってほしいけれどムリはしないでね?」

 花子さまは夕さまの方に向き直られます。

「わかってる。手紙は出すから安心して?」

 花子さまに向けられる夕さまのなんともお優しい微笑みでございます。


「失礼いたします。夕さま、お出かけの準備が整いました」

 カノジョもいないのに光る君の恋バナ相談相手をつとめる弦三郎が夕さまを呼びに参ったようでございます。

 

「はい。じゃあ頑張ってね」

 もちろん花子さまも温かい笑顔で送り出されます。

 皆さんおじゃましました、と夕さまは爽やかな風のようにその場を去っていかれます。はぁぁぁ、素敵ねぇとうっとりため息のお三人とSKJ48の面々でございます。



「試験に受かったらいよいよかしら?」

 紫子さまがうめにカプチーノのおかわりを作らせます。

「ホント、誰かさんに似ないで一途よねぇ」

 明子さまはマカロンをお口になさってます。

「まあまあ、誰かさんてどなたかしら。ほほほほほ」

 花子さまはいつでもにこやかでございます。


「ふぇっっっくしょんっっ!」

大臣おとど。大丈夫でございますか?」

 宮中でのくしゃみはとどまるところを知りませんわね。


「あのイケメンアイドルにこんなに想われてお幸せな姫ね」

「夕くんがみんなのアイドルじゃなくなっちゃうのねぇ」

 夕さまの恋のウワサについてのお話のようでございますね。

「でも夕くんには幸せになってほしいわ」

 母親らしい花子さまのお言葉でございます。

「素敵な恋物語よねぇ」

「どなたかおとぎ草紙にでも書かれればいいのに」

 女子が集まれば゛恋バナ゛で盛り上がるのは古今東西を問わないようでございます。


「それでお相手の姫さまのことは花子さまご存知なの?」

 紫子さまが花子さまにお尋ねになられます。

「夕くん、あまりそのことは話してくれないから、こちらからも聞きづらくて」

御文ラブレターは出しているんでしょう?」

 明子さまも興味津々でございます。

「そうね、でも光る君とは違ってそこらへんの草や枝に簡単に文をくくりつけてるの」

 夕くんらしいだけれどね、と花子さま。


「親子でも大違いね。光くんなら花言葉まで調べてその花取り寄せてくれるわよね」

 と紫子さま。

「マメ、なのよね」

 こちらは明子さま。

「マメじゃなきゃわたしたちこうして出会ってないわ」

 紫子さまのこのご発言に一同一瞬無言となって顔を見合わせられます。


「「「ほんとよね――」」」

 お三人の明るい笑い声が夕暮れのヴィレッジすぷりんぐに響き渡ります。


「ふぇっっっくしょんっっ!」

「大臣。もうお帰りになられた方が……」

「そうしよっか、な、ふえっっ、っっくしょん!!」


光くんダーリンに」

光さんダーリンに」

光る君ダーリンに」

 お三人がカプチーノのお茶碗を目の高さまで持ち上げ、お互い目を合わせてふふ、と微笑まれます。



 本日もパレス六条平安なり、でございます。

 宮中もそれなりに平安なり、でございます。


 ☆本日のBGM♬

 Love So Sweet          嵐



 ✨『げんこいっ!』トピックス

『月刊宮中ニュース』の今までの最高部数は光る君が紫子さまをエスコートした宮中舞踏会特集号。俗にシンデレラダンパと語られている。

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