誕生

気が付いたら私は崖の上で立ちすくんでいた。どうしてそこにいたのかはわからない。恐らく飛んでいる最中にアレに当たり、そのまま落ちた先があの場所だったのであろう。

「うわっ!」

 気が付いたとは言ってもこの姿になったばかりだ。私はそのまま崖下に落ちてしまった。

「大丈夫だ。飛べばいいだけのこと…。…飛べば…。…飛べば…」

 しかし身体は浮かない。狩りでもしているかのように急降下していく。

「うぐっ」

 そのまま地面にぶつかる。しかし、

「生きてる…」

 無我夢中で飛ぼう、飛ぼうと思っていたら、本当に少しだけ飛ぶことができたようで、減速していた。

 崖の一番下にいて、もう落ちることはないこと確信し、飛ぶ練習を始める。まさかこの歳で「飛ぶ練習」をすることになるとは思ってもみなかった。

 苦節15分、早くも飛ぶコツを掴み、崖の上までひとっ飛び。次にすることは…

「なんだあれは」

不思議な何かがいる。様々な色のものがいるようだ。取り敢えず飛んで様子を見よ(ドスッ)

「!?」

 いきなり襲いかかってきた。ばしばしと攻撃される。払おうにも数が多い。…食べられるのか。私はここで。生物ともつかない何かに食べられて終わるのか。

「レッツジャスティス!」

 何か変な言葉が聞こえたと思った瞬間、急に体が楽になった。誰かが手を差し伸べている。

「ヘイ、大丈夫だった?セルリアン相手に全く抵抗しないあたり、新しくアニマルガールになった子みたいね?」

 白髪の誰かが話しかけてくる。それにしても…

「………」

「ちょっと、いきなり飛んでかないでよ。クールに行こうっていつも言ってるじゃない」

茶髪が増えた。が、意識には登ってこなかった。出てきた言葉は白髪の方への一言。

「…美人だ…」

「!?」

「…ハッ」

「あらハクトウワシ、いきなりなにか言われちゃったわね。ご感想は?」

「感謝の言葉はよく聞くけど、第一声が美しいなんて子は初めてね。アメージング」

 どうやらこの二人は仲がいいようだ。襲ってくる気配もなし、安心しても良さそうだ。

「君達は…」

「私は正義の使者、キャプテンハク「少し長いわ」…ハクトウワシよ」

「私はタカ。よろしく。あ「あなたは?」」

 容赦ない言葉の被せ合いだ。普段からこんな感じなのだろうか。…しかし、

「私は…何なんだ?」

思えば私は自分がなんと呼ばれるものなのか知らない。二人が知るよしもないが、思わず聞いてしまった。

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