四十四「探し物はふとした時に見つかる」
「おぉ……すげぇな」
俺は長老と一緒に大聖堂内にある古書庫に来た。
古書庫といってもかなりの蔵書数である。
……ここから必要と思われる情報をサルベージするのはキツイな。
「この書庫にはこの街おろか、世界の記憶が保存されておる。まるで、時を遡るように過去を振り返れるでしょう」
そうは言われても……これ全部から漁んの? キツくね?
俺はこの世界きっての極大秘密、天使と魔王そして魔女に関する文献を読み漁りにきたのだ。
こんな大書庫から探しきれる自信はない。
「なぁ、大事な物だけ保存してるとかないの?」
「御察しの通り。こちらですじゃ」
長老司祭は首からかけた鍵を地面に差し込んだ。
すると、そこの板だけが浮き上がり地下階段へと繋がっていた。
こういう隠し通路ってワクワクするよな。
奥は冷えているが湿気は少ないようにも感じる。
「ここら辺がお望みの情報が手に入るかと」
話の早いジジイで助かるぜ!
っとと、キャラぶれは良くねぇな。
狭い個室になっている棚を見ると本の衰えを感じさせなかった。
まるでここの部屋だけ時が止まっているように本の劣化は無かった。
「つーか、俺字読めないけど……」
「マジかよ」
おい、ジジイ。お前も若語使ってんじゃねぇよ。
じゃなくて。
今の今まで黙っていたがこの世界の字なんて読めるわけないだろ。
言葉は脳内変換してくれているようで助かるが、字となってはわけわからん。
あれだな言葉に直してくれる魔法とか使えたら良かったな。
でもまぁ幸い、ジジイがいるから読んでもらえれば問題はないだろう。
「ま、そうするか……これとかどうだ?」
「どれどれ……『マドル・アスリクト』……世界三大の知恵の一つの魔法じゃな。関係あるかの?」
「ないな、次」
「あの、結構ヤバ目な魔法なんじゃが……って食いつかんのかい」
ジジイからヤバイとか聞きたかねぇ。
魔法? 使えないからいいよ。
というのも使えないか。
軽く見てもらうか。
「3行でまとめろ」
「は? えーと、魔力高まりし者、時空を超越。それ即ち過去をも変えうる」
あー、はい。遡り系の魔法ね。
……って! それ『時の魔女』が使いそうやないか!
ちょっと気になるな。
「他、大事そうな事かかれてる?」
「……この魔法を使えたのはたった1人って事くらいじゃな。こんな分厚いが書かれてることは案外少ないんじゃ」
あー、あるある。
文字数多いくせに内容が無いような本。
けれど、その中に隠された重要事がある時があると思う。
俺は本を読まないからわからんが。
後で盗んでおくか。
「じゃあ……これとかはどうだ?」
「どりどり……『ウォーツ・モディレクティブ』、禁忌の魔法じゃな」
「中身はよ」
「なんか扱い雑になっとらんか? まぁよい。何々? 林檎の形をした木はいずれ果て、生命へと足を進める。そこに蛇がいようとも。じゃって」
うーん? 聞いてる限りなら生命に関する魔法か。
蛇を置いておけば人体錬成か復活の呪文だろう。
ま、それも扱える奴なんていねぇだろうけどな。
「お…………おおお?!」
俺がふと手に取ったのは普通の本。
俺からすればな。
「あ〜、それだけど、ワシもどの賢者も読み解けなかったのじゃ」
「いや、いい」
だってこれ、日本語なんだもん。
ちゃんと漢字も使ってあるし、俺なら読める。
なにこの急展開、後ろ気をつけよ。
中身はこうだ。
『地に舞い降りし天使、羽を取られ悪魔に引き裂かれ死す。されど、二つの羽は世界に広がり、片翼は世界を包んだ。もう片翼に殺されるとも知らずに』
『魔王はいずれ果てる。その都度新たな王を見出す。双子の蛇が魔王を喰らい、新たな王は潰された。そこに一縷の希望が世界にやってきた。その者こそが世界の翼であり、新たな王たる子孫であった』
『魔女は若い男を好んだ。それも芳しい香りのする若い男だ。だが、その結果は新たな葉に露を拾われ、魔王を討つ者として世界を広げた。かつて恋した者とも知らず、討たねばならんかった』
『悪魔、その惡の加護にて命落とさず。死せれば若く命を芽生えさせ、遠く彼方で生まれ落ちる。その惡、消える事は無く輪廻すらも凌駕する。さて、次はどこの国で堕ちようか』
俺は一頻り読み切ると頭を抱える。
「わっかんねぇよぉぉおおお!!!」
「当然じゃろ」
いや、字は読めるんだけどね。
なにが言いたいかさっぱりだわ。
しかも魔王、天使、魔女、全部ピンポイントじゃねぇか!
しかも悪魔もプラスしてあるじゃねぇか、大当たりじゃねぇか!
くっそ……もっとオラに教養があれば……!
「もう、時間が遅い。明日になさい」
「……いや、大ヒントはもらった。明日は要らないかもな」
「ほう?」
「この本とこの本、もらってくぜ」
「ちょ、それ大事なヤツー!」
あーばよ! とっつぁーん!
俺は大事に二つの本を抱えて宴に戻った。
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