四十二「名探偵アサタン再び」

 俺らは大聖堂の前まで移動し、手に入れた鍵を入れる穴を探していた。


 「こんなデカイ入り口なのに鍵は小さいんだな」


 「そーだね〜。やっぱり隠し鍵穴かなぁ?」


 かれこれ30分程、鍵穴を探しているが全然見つからないのだ。

 もはやこの大扉には鍵穴がないかと思う程には探し続けている。

 扉を押し引きしても扉自体の中で棒が引っかかっている感触がある。

 鍵がかかっている事は明白だ。

 だからこんなにも必死になって鍵穴を探している。


 「おーい! こっちこっち!」


 左からロヴに呼ばれる。

 俺らは駆け足で向かうとそこには何かの紋章があった。

 ……伝説の剣についてる三角形ではないぞ。


 「これは……何かの紋章?」


 「この裏に鍵穴があるっぽいけど……ビクともしないよ」


 俺もロヴに変わり鍵穴を隠す紋章付きの金属板を動かそうと試みる。

 確かに人の力ではビクともしない。

 となると、謎解き要素? やっぱり伝説の剣の紋章かよ。ごまだれ〜的要素だよ。


 「街のどこかにヒントがあるかもしれない。ラフィー、地図を」


 「ほいさっさ!」


 ラフィーから地図を受け取り、大聖堂のある位置を確認する。

 そして、長老ハウスからくすねた物なので落書きは出来ないので雪に書き写していく。


 「えーと、ここが大聖堂だとして。……ここが入り口。あ、東西南北にあるな」


 西洋の造りだが風水にはこだわりがあるのかもしれない。

 ますます地図が怪しいな。


 「んで、このマークは…………かまくら?」


 地図には洞窟の入り口のようなマークが。

 雪国だしかまくらの方が正しいかもしれない。

 そのマークが六つ。地図に記載されている。


 「ちょっと気になるな。ナビィ」


 「りょーかい」


 ナビィにひとっ走り行ってもらう。

 その間に別の事を推測する。

 この扉のマークに意味があるだろう。

 描かれている紋章は六芒星。

 三角形が二つ、互い違いに設置されていて魔法陣のようにも見える。

 ……魔法?


 「なぁ、ロヴ。ここに魔力を注いでみてくれ」


 ロヴが了解と言うと板に手をかざし、魔力を注いだ。


 ブッブー


 「は?」


 不正解音が鳴った。

 むしろ不正解意外考えられないよくある音。

 ……ちょっとムカつくな。


 「……何か足りないのかもね」


 ラフィーの言う通りかもしれない。

 魔力で反応をしたからこそ何かが足りなくて正常に起動しなかった。

 そう捉えるのが一番だろう。

 となれば先ほどのかまくらが怪しい。

 もう一度、地図を確認する。

 すると、柑橘系の匂いがした。


 「ん? ……ラフィー、火あるか?」


 「ほいさっさっと」


 ラフィーからロウソクを受け取る。

 火とロウソクはミカさんから貰った『備えあれば嬉しいなバッグ』に入っていたようだ。

 あの人中々良いもんくれたわ。


 「ほーれほれこうするとだな……やっぱりな」


 てれれれてれれん! なんと炙り出しが出てきましたとさ。

 うむ、ネット齧りの知識だが当たって良かった。

 地図から柑橘系の匂いがしたからもしかしたらと思ったがやはりな。


 「お兄ちゃんどしたの?」


 「ほれ、火をかざすと出てくる炙り出しだよ」


 3人で地図を囲むと六本の線が出てきた。

 ……いや、わかんねぇよ!

 といっても何かしらのヒントであるのは間違いないだろう。

 線は真ん中の大聖堂に向かって伸びている。


 「線は……ここら辺に、ってうわぁ!」


 スボっといきなり雪が深くなった。

 腰まで埋まり、ラフィーとロヴに引っ張りだしてもらう。

 線の上に立つと深くなる雪。

 この下に何かがある?


 「ちょっとここら辺、掘るか」


 俺らは、えいさほいさ雪を掘る。

 すると出てきたのは溝。

 横幅2〜3メートルほどの。

 地面は凍っていてその下は煉瓦のような石畳の作りになっていた。


 「もしかして、川……水道?」


 ビンゴだ。今日は冴えてるなラフィーちゃんよ。

 すると、この六つの水道は大聖堂に向かって伸びている。

 六つ?

 確か、かまくらも六つ。

 もしかして。

 俺はもう一度、地図を確認する。


 「なるほどな……かまくらと大聖堂は繋がってるようだ」


 そして、そのかまくら全てを繋げると。

 完璧な六芒星が。

 扉のマークと一致するではないか。


 「アサタン! はぁっ! はぁ……」


 ナビィが丁度よく帰ってきた。

 その表情は何かあったな?

 むしろなきゃ困るわ。


 「何があった?」


 「……燭台。火は付けれないけど。何かやれば火が付くような、完璧怪しい燭台があった」


 うむ、結構だよワトソン君。

 つまりだ。

 では、行こうか。


 「じゃあ俺とナビィで一つずつ回るからお前らは待機。待ってろ、もうすぐ解放してやるからな」


 俺は扉の奥に話しかけるように呟いてナビィとかまくら巡りをする。

 俺も一度は日本の鎌倉に行ってみたいものだ。


 # # # # # # 


 「いや、あからさまじゃね?」


 かまくらに到着すると手のひらのマークがある金属板が。

 いかにも乗せてくださいって感じだよ。

 いっちょ、やってみますか。

 俺は金属板に手を置く。


 「無反応……ふんぎっ!」


 俺は魔力を注いでみる。

 初めて使おうと思って魔力を動かすから全然、ワケワカメ。

 力を入れてもダメ。


 「なぁ、ナビィ。魔法、いや魔力ってどう出すんだ?」


 「イメージ。それしかないね。アタシは感覚でやってるから分かんないけど……よく言うのは自分の中にある魔力を手から出すイメージって」


 あぁ、よくあるヤツね。

 ホントに大丈夫かなぁ?

 俺は自身の中の魔力の流れに耳を貸す。


 『えっほ! えっほ! えっほ! えっほ! えっほ! えっほ! えっほ!』


 なんか忙しそう……って! なんでホントに喋ってんだよ!

 確かに耳を貸すって言ったけど比喩だよ!

 俺は心の中で話しかけてみる。


 『あの〜、すいません』


 『えっほ! えっ……ストーーップ! マスターからの話だ! どうなさいました?』


 えっ、意外と会話出来るんだけど怖っ。

 何々、魔力って生き物なの?

 まぁ、チャンスだし単刀直入に言おう。


 『魔力を右手から出したいんですけど』


 『了解! 今運びますんで! えっほ! えっほ! えっ……』


 だんだんと遠くなる掛け声。

 すると、じんわり手のひらが熱くなる。

 後は放出のイメージかな?


 「出ろっ!」


 ぼひゅ! と手から黒い煙が上がり、置いていた板に輝きが灯る。

 その輝きは真っ直ぐ近くの燭台に火をつけた。

 燭台には淡い青色の光が灯る。

 ……色々と大正解すぎだな。


 「ナビィ、何か変化は?」


 ナビィに外を見てもらうと色んな変化があったらしい。


 「えーと、このかまくら近くの雪が少し溶けて、川? みたいなのが出てきた。 あと、かまくら自体も雪から出て、かまどみたいになってる」


 川ねぇ。

 それが大聖堂に流れていくと。

 そうして六本全てを繋げば鍵穴の登場と。

 やだ、名探偵アサタン降臨?

 

 俺らは残り五つのかまくらにも火を灯して大聖堂へ向かった。

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