あるくもじ。
@ora_uuuuuuutan
第1話
その日の僕は不貞腐れていた。
スナック菓子を食べ、炭酸飲料を飲み、お気に入りの冒険映画までもを観たというのに、そのひとつひとつの行為がどれも、ひどく、味気ないものに思えた。
組み合わせが今の気分に合っていなかったのかもしれないと、開けたばかりのスナック菓子を煎餅やチョコレートに変えてみたり、炭酸飲料を強炭酸飲料に変えたりもしたが、無意味だった
僕はトイレへ立ち、食べたものをきれいに吐き出すと、真夏にも関わらず、窓を閉め尽くした。暑さで弱った僕の身体には雑音が多すぎる。視界がぐにゃりとゆがみ吐き気がした。まるで船酔いでもしたみたいだ。
ちなみに言っておくが、僕の家にはエアコンなんてものはない。エアコンどころか扇風機さえも置いてない。あるのはどこかで見た事がありそうな無料配布のうちわ。
…にもかかわらず、窓を閉めた。
オイルみたいな何とも言えない匂いが、工事現場のドリル音とともに手近な僕の家に侵入してきていたのだ。
大体においてなんで私の手で作り出したはずのモノが意志を持ち、私と同じように生きているのか全く、全然、これっぽっちも理解できない。
これじゃまるでSFの世界じゃないか。でなければ、スナック菓子が歩いて皿に移動するなんて事はないし、この文字の羅列が勝手に歩を進めたり、私に話しかけるなんて事もないはずだ。
「文字の羅列」そう言葉にして、ふと思考をめぐらせた。
「そうか、文字の羅列か。」
なんでもっと早くにきづかなかったのかー。
文字の羅列が勝手に歩を進め、私に話しかけるのであれば、それを利用してやればいい。
上手くいくかはわからないけれど、僕自身が書いたって誰かの興味を惹くようなものが出来るわけじゃない。それならいっその事、彼の好きなように歩かせ、彼の好きなように話させてみようじゃないか。
それ以来、僕は彼との生活を開始した。
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