彼らと彼女の独白
二人とも無事でよかったー!
……でもこれで全部解決ってわけじゃないんだよね? まあその辺についてはオレはあんまり関係ないし、カンナ辺りがなんとかするんだろうけど。うちは裏で駆け引きとか向いてないからなぁ。
でも本当、無事でよかったよー。
半日もないくらいで全部終わったから、えーと、ショースイ?した感じもなかったし。安心したー!
いやまあココロのキズとかそういうのまではわかんないけど! でも笑えてたし、そんなに無理した感じでもなかったし!
うん、とりあえず、『結果は上々』ってやつなんじゃないのかな。今回のこと自体は、いつか起こってたことなんじゃないかなって思うし。
……多分だけど、そういうこと、わかってて動いたんだろうなぁ。
こういうの、意外にカンナとかミスミは気付けてなさそうだけど、どうなんだろ。
無事でよかった、と、諸手を挙げては喜べませんね……。
そもそも事を起こさせてしまった時点で、私たちの不手際もいいところですし。
まあ、あんな直接的で安直な手段で行動を起こすほど馬鹿だとは予測できなかったわけですが――ということはやはり、私たちの対策が片手落ちだった、というわけですよね……。
それでも、『前』とは違って、早期に解決できただけよかったんでしょうけど。……あんな思いは、もうごめんですから。
起こった事実は変えられませんけれど、それに対して、叶う限り一番マシな手を打てた、と思っていいんでしょうかね。
とりあえず、当事者のお二人の様子見ですけど。
自力で脱出の一歩手前まで動いていたらしいのは、心強いというか、無茶をするというか……。まあ、より危険に晒されたわけではなかったみたいですから、結果よければ、というやつなんでしょう。
てのひらで、転がされて終わったんだと思うけど。でも、きっとこれが最良なんだろうっていうのはわかるから、いい。
一緒にいたかったけど、ずっとずっといっしょがよかったけど、それはたぶん、おかしい、いびつな、関係なんだろうから。
それでもまだ、『変わってしまうしかない』道以外が残ってるのは――残されてるのは、少しでも、同じ気持ちでいてくれたってことなの、かな。まだ、今のまま……少しの変化で、成長で、いいよってことなのかな。
いつかは、変わらないといけないとしても。いつかは、離れないといけないとしても。
もう、少しだけ……あいまいな、ままで。あの子への、気持ちの再認識、だけで。
ゆるしてくれるんだって、思ってもいいのかな。
……その甘さが、離れがたくしてるんだって、わかってるのかな。わかってなくても、いいけど。
二人とも、無事で。いつかの再来には、ならなくて。
それだけでよかった、っていうには、僕の周りは彼女たちに迷惑をかけすぎてるけど。
それでもきっと、二人とも、ゆるしてしまうんだろうって思うのは、きっと買いかぶりじゃないんだろう。
それが彼女たちのやさしさで、僕たちが彼女たちに惹かれた理由で……彼女たちに甘えていた、理由で。
それを自覚してしまったから、僕たちは変わらないといけないんだろう。出会ったことを、良かったんだって言えるように。
それでもまだ、全てが変わってしまうのはこわいから……もう少しだけ、ゆるされていたいって思ってもいいかな。
それを弱さだと、諦めでなく、自嘲でなく、ただ認められるようになったから、あと少しだけ。
……きっと彼女は、仕方ないなって溜息を吐いて、それでもゆるしてくれるんだろう。
最初から、なんだか少し、不思議だった。向けられる感情に、時々、そわそわして、居心地が悪くて。
それは、分不相応だとか、あからさますぎて、とか、そういうんじゃなくて。
どうしてなんだろう、ってずっと思ってた。
でも、彼女と会って、話を聞いて。
……ああ、そっか、って思った。すとん、と納得した。
全部が全部、嘘だったとは思わない。勘違いだったとも思わない。
でも、わたしに向けられる感情が、何を通したものか、わかってしまった。誰の存在が前提にあってのものだったのか、わかってしまった。
きっと彼らのすべては、嘘でも勘違いでもなくて、それでもきっと、本人たちが思ってるようなものじゃ、なかったんだ。
それに対して、恨むとか、怒るとか、今まであったあれこれを考えたら、そういうことを思うのが普通なのかもしれないけど。
なんでかな。逆に、今までよりずっと、彼らが身近に思えるようになった。ちょっと、かわいいなって思った。
きっとそれは、悪いことじゃなくて、ここから始まる何かも、きっとあって。
そこに彼女もいたら、きっと楽しいなって思うから。また会うの、楽しみだなぁ。
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