王道ベタネタ(?)×ぐだぐだ日常編

『いつもと違う真剣な彼にドキッ!』なイベントが起こったようです。(ユズ編)




「聞いて聞いてー!!」


「何をだ。っつーかうるさい」


「冷たいっ! まあそれはともかく、聞いて聞いて!」


「だから何をだ。そこに座って三回深呼吸して声量を落とした後なら聞いてやる」


「わかった!」




(深呼吸中)




「よし三回! あのねあのねっ! 目が合った!!」


「……は?」


「誰か来たなとは思ったんだけど稽古中だからそっち見れなくて! 稽古終わって気配する方見たらあの子が!! オレのこと見てくれてたってことだよね!? しかも目が合ったんだよ?! すごくない!?」


「とりあえずもう1ランク声量落とせ。あと順序立てて話せ。二度言わせるなよ?」


「……ご、ごめんなさい……」


「わかればよろしい。で?」


「今日の朝、久しぶりに学校の武道場で稽古したんだけど、途中から誰かが覗いてて」


「うん」


「何か知ってる気配っぽかったから、気になったけど区切りつくまでそのままにしてて」


「うん」


「稽古終わって誰が覗いてたのか確認したらあの子だった上に、目が合ってちょっと調子に乗りすぎましたごめんなさい」


「いや別に二回も謝らなくてもいいけど。もし次やったらそれ相応に対応するだけで」


「ホントごめんなさい……!」


「――しかし、朝稽古か……」


「……な、なんかまずかった?」


「いや? 多分あんたにとってはよかったんじゃない」


「え?」


「あんたが傍から見て真剣に見えるのって、稽古とか試合中くらいだし。多少は印象良くなったかもよ」


「それってオレがいつもは真剣に見えないってことだよね?」


「否定はしない」


「そこは否定して欲しかったです!」


「無理言うな」


「え、無理なの……?」


「無理。無い袖は振れないんで。……まあよかったな? 目を逸らされる状態からは脱却できそうだし」


「うん! 脱却できるように頑張る!」


「頑張るな。逆効果だから」


「えええ!? オレのやる気全否定!?」


「否定はしてない。ただ『目を逸らされる』から『避けられる』にクラスチェンジしたいとかじゃないならやめとけってだけで」


「わかったやめます!」


「そうしとけ」


「……」


「…………」


「……何もしちゃダメ? こっちから近付いちゃダメ?」


「――二度は言わせるなっつっただろうが」


「ご、ごめんなさいもう言いません!」


「このトリ頭が。全力で懐きに行ってドン引かれた後なんだから自重しろ。もう一回引かれたらもう知らないからな?」


「そ、そんなこと言わないで! 見捨てないでー!!」

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