第15話 トントン拍子に話は進む

 エドワードは、自分が聞いたことをヒロトに全部、話した。

 ヒロトは暫く黙っていたが、口から出てきた言葉は、これだった。

 「マルクと、少しでも話しが出来て良かったよ。顔も見れたしな。まあ、穏やかな内容の話では無かったけど…」


 それを聞いて、エドは胸のつっかえが取れた。

 「それもそうだな。それに、私のヘリにはワープ機能が付いたし…。行って良かったよ。んで、トモは?頼みたい事があるんだ。ヒロ、トモは」


 ヒロトは、エドに愚痴ってきた。

 「お前が、あそこから5匹連れてきたお蔭で、私は構ってもらえなくなったんだ。

 どうにかしろっ」

 それを聞いて、思わず苦笑してしまった。

 裏庭に行くと、トモが5匹を相手にしているのが見える。

 トモの遊び相手として連れてきたわけではないが、まあ良い。


 エドワードは、トモにも話した。

 マルクとアランの事を言うと、彼は驚いて言ってきた。

 「エド・ボス。私は、彼にリクエストをしていたんだ。一つも応じていないではないか。それに、次代の御とかなんとか言っておいて、自分は姿を完全に消す」

 エドワードは、その言葉に、こう応じた。

 「ほー、トモは御になりたい。そういう事か。私ならイヤだけど、なりたいってトモが言うのなら臣下になってやっても良いぞ」

 「なっ…、誰が、そんなことを」

 エドワードは、陰に隠れて聞き耳を立てているヒロトに向かって言った。

 「ヒロー。トモは御になりたいってさ」

 「エドッ。そうは言ってないでしょっ」

 ヒロトはトモを睨んでいる。

 「トモ、本気か?」

 「だ、誰がなるかっ!」

 すると、エドワードは言ってきた。

 「ドイツにあるフォン・パトリッシュは、あと数年で無くなるだろう。ここで、フクヤマの家紋を発祥させてはどうだ?」

 「どういう意味だ」

 トモとヒロトが驚いてる。

 「もちろん、フクヤマ家の御というか、ドンだな。そのドンには、トモがなる」

 「なっ!」と、トモが驚きの声を出し、

 「私もフクヤマだが、それなら抵抗ないぞ」と、ヒロトが応じる。

 「あのねっ」

 トモが、何か言いたけだ。

 そんな時、「私もフクヤマだけど、その案には賛成だな」と、ユタカが割って入ってきた。

 「ユタカッ、お前まで何を」と喚くトモだが、他の声も入ってくる。

 「ああ、それは良いね。私は、家の病院を継ぐ気がないのでフリーターなんだ。

 ここで働かせてもらう」と、タカが言ってくる。

 「タカッ、お前ね」

 また別な声が聞こえてくる。

 「うんうん、それなら私も交渉させてもらう。ボス…、いや、ドン。私は、ここでの進出を考えている。日本が本部になるのだが、パースで病院を建てたい。で、タカが、そこで働けばいいよ」と、ユウマまで言ってくる。


 すると、嬉しそうな声が聞こえてきた。

 「おーっ!それは良いな。それに息子もいるし、跡継ぎの事も万々歳だ。早いか」と言ってくるのはヨウイチだ。

 「私は4月からここだし。それまでに人数を増やしておくよ。10人は必要だな」と、マサまで言ってくる始末だ。


 「香港と同盟結ぶか?」

 ワンまで…。


 エドワードだけでなく、博人さんも乗り気になってるみたいだ。

 「そうと決まれば家紋の制作だな」と、エドが言ってくる。

 トモは悔しくて、こう言ってた。

 「いつ決まった?」

 即答だった。

 「今だ」


 ユタカが嬉しそうに応じた。

 「家紋は任せて。お抱え技師として、初の仕事だな。

 あ、そうだ。フィルがシンガポールだから、あいつにも言っておくか。

 あとはイタリアと、サトルの居る日本にも連絡して、同盟結ばせよう。

 あ、ジョンの居る病院にも話をしておくか」

 ユタカは嬉しそうに呟いている。


 そして、当人であるトモを除き、話は勝手に進んでいく。

 トモは、ドーベルマン相手に愚痴を言う始末だ。


 そして、ヒロトは逃げ切ることが出来ず、トモに捕まってしまい、昼間っからベッドの相手を余儀なくされる羽目になってしまった。


 エドは、トモに頼みたい事をすっかりと忘れていた。


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