第55話
「なんだい?」
「二人は私が死ぬのと、三人そろって犯罪者になるのと、どっちがいい?」
「えっ?」
「?」
その後の話し合いは上条抜きで、桜井と雅美の二人で行なわれた。
桜井が「吸鬼の弱点は、まだ上条は知らないほうがいい」と言ったからだ。
――なんでそこまで俺に弱点を隠すんだ。
上条は思った。
桜井のやつ、俺が弱点を知らない状況を、ただ面白がっているだけではないのか。
そう考えると上条は、そんな気がしてきた。
上条は二人とは離れた席に座らされて、ひたすらコーヒーを飲んでいるだけだった。
これで何杯目のコーヒーなのか、上条自身判らなくなっていた。
学食の端で背を向けて話をしている二人の会話は、どんなに聞き耳を立てても上条には聞こえなかった。
――まったく。なんなんだよ。俺もおもいっきり当事者なんだぜ。
上条は残りのコーヒーを一気に飲んだ。そしてむせた。
――ほんと、踏んだり蹴ったりだ。
上条が腹いせに、コーヒー缶を桜井の頭めがけて投げつけてやろうかと半ば本気で考えていると、二人が立ち上がり、上条に向かって来た。
どうやら話がついたようだ。桜井が言った。
「僕と雅美ちゃんは、これから吸鬼討伐の用意をしなければならない」
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