第27話

「大丈夫じゃないよ」


「それじゃあ、こんなところに居ないで、早く助けに行かないと」


「行ってどうするの? どうなるの?」


「そ……それは」


「行ったところで何も出来ない。出来ることはない。ただおろおろするばかりだよ。時間の無駄だ。木本を助けたかったら、洞窟に封じ込められていたやつを、何とかするんだ。それ以外、木本を助ける方法はないんだよ」


「……そうだな」


桜井がスマホを触りだした。


「これ見て。前よりも見やすくなったよ」


それは例のお札だった。


確かに見やすくなっている。


「とりあえずこのお札を手に入れること。そして封印されていたものが、今何処に居るのかを見つけること。そっちが最優先だね」


「でもどうやって」


「実は、ある程度の目星はもうつけてあるよ。それで充分だとは言えないけど。それにしても」


桜井がスマホをしまった。


「ネットって、本当に便利だよね」



車を走らせている。


かれこれもう四時間は走っているだろうか。


隣町を抜け、山間部と郊外の中間のようなところを通り抜けて、今度は小さな町に入っていた。


「まだなのか」


上条が言った。

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