第20話

「それは行ってみないとわからないよ」


それまで黙っていた上条が口をはさんだ。


「それじゃあ行ってみようぜ」


「ああ、行こう」


そう言った桜井は、なんだか嬉しそうだった。



洞窟へはあっさりと着いた。車が通れる道から少し入ったところにあるからだ。


「ここかあ」


木本のテンションが見るからに上がってきている。


上条が言った。


「一応立ち入り禁止だが、入ろうと思えば簡単に入れるな」


桜井が言った。


「日本にはこういったところが多いね。立ち入り禁止の看板だけ立てて、その後は訪れる人の良識に任せているんだよ」


「そんなことよりも、せっかく来たんだから、さっさと入ろうぜ」


「わかったよ」


桜井が鞄から懐中電灯を三つ取り出して、そのうちの二つを上条と木本に渡した。


「それじゃあ俺が先頭な。じゃ、行くぜ」


上条も桜井も文句は言わなかった。



どうせ入ってすぐにちょっとした空間に出て、それで終わりなのだから。


その空間は、入口に立っている時点で、もう見えている。


当然歩き始めると、すぐにその空間にたどり着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る