第11話

今までの最短記録だ。


その後の昼食会も、犬田の時と再現されたかのように、全く同じ。


口を開かず、何も食わず、ただ一点をひたすら見つめている吉木が、食堂中の注目をあびた。


やがて三人が出てゆき、四人が残された。


これも前回と同じ。


吉木がいなくなってはじめて、三人は重い空気から開放された。


「やっぱりどう見ても、死んでからある程度経った人間の顔だ」


桜井が最初に口を開いた。


木本が答える。


「おうよ。桜井の言うとおりだぜ」


「それにあのぎくしゃくした動き、僕には死後硬直のように思えるんだけどね」


「おいおい、だとしたら本当に死んでんのかい。それじゃまるで、ゾンビだぜ」


いつもなら上条と木本がしゃべり、桜井はほぼ黙っているのだが、先週からは上条がほとんどしゃべらずに、桜井と木本で話が進んでいる。


この件に関して上条はよくわかっていないし、桜井を頼って聞き役にまわっているのだ。


木本はわかろうがわかるまいが、どちらにしても黙っていることなんて出来ないし。


なんだかの意見のある桜井と木本が二人で話し合うという状態になっている。


上条は別にそれでいいと思っていた。


「それにしても、犬田も吉木も、二週間休んだら死人みたいになって出てきて。一体なんなんだよ、あいつら」


「次は山谷かな」


「はあ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る