第286話就寝

意外なことに、エミリーとほかの女の子の争いは、意外にすんなりと収まった。


理由は単純に、もう日が暮れたからである。


俺とエミリーが向かい合っている時点で、すでに夕焼けであったのだから。


「一度休んで、話は明日にするということで」


そう言ったらなんとか納得してくれた。


無理やり押しかけて来た5人に、泊まる部屋などはない。


日本に来るときに使った飛行機で、就寝するらしい。


オリヴィアの話では、心優しい賛同者のおかげで、飛行機は撃墜されずに着陸できたんだとか。


当然、俺も彼女らと同じ場所に寝るのだと思っていた。


「招いていないお客さんと違い、ちゃんとカズちゃんの部屋はあるよ」


すっかり忘れていたが、俺は訓練の正規参加者であった。


しかし、女の子たちは俺をエミリーの近くに置きたくないらしい。


「一樹、バカほど巨乳って知ってた?」


「どういう意味だ?」


まさか、自分がバカって言ってるわけではないよな?


「見ての通りの意味だよ」


オリヴィアの指さす先にいるのは、ロングの方の金髪。


「そうか」


そうなると、マイシスターが一番賢いことになるような気が……


「一樹君は私の婚約者なので、ふさわしい行動を」


先輩にもそう言われる。


「まあいい、気を付けよう」


以前、信頼していたチェーンを外されたことがあったっけ。


エミリーはマスターキーを使いそうだし、対処法なんてあるんだろうかね?


「実は、こういうものを持ってきているんだよね」


そう言ってオリヴィアが示したのは、扉を開けにくくする補助錠。


「自分で言うのも何だけど、高貴な身分であるからね。こういうものを持ち歩いてもいるのさ」


「ありがとう。これでエミリーの襲来を心配する必要がなくなる」


さすがに、扉ごと破壊したりはしないだろう。


そのままの流れで、用意されていた部屋へと入る。


軽く調べてみたが、何かしらの仕掛けはなさそう。


安心して補助錠を使い扉を施錠した。


シャワーで汗を流し、そのままベッドへ。


「明日のことを考えると寝れんな」


一度矛を収めさせたとは言え、何一つ進展していないもの。


どんなことが起きるか考えるだけで、憂鬱になっていく。


「考えても仕方ない。体を休ませないと」


たとえどれだけカオス化するとしても、日は再び上るのだ。

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