第274話逃亡不可能

「しかし、なぜ急に眠くなったんだろう?」


紙を読んで、茶を飲んだ後に睡魔が襲ってきた。


昨日の夜は遅くまで起きていないので、寝不足ってことはないはず。


「サプライズのために、眠り薬をティーに混入させたんだ。目を覚まして最初に見るのが、私の顔になるってもの。どう? 楽しんでもらえた?」


「サプライズってより、ハプニングだよ」


これもカルチャーショックの一種なのだろうか?


「まあいいや。俺は帰るね」


本人の同意なしで訓練に参加させた以上、命令拒否ってことにもならないだろうし。


仮に何らかのペナルティがあったとしても、この空間から出て行きたかった。


「どうやってだい?」


「そりゃ、ここから出てだけど?」


当然のことを聞かれ、俺は困惑する。


「もう輸送機は上空を飛んでるよ。ガタガタと鳴ってるでしょ? それが証拠」


「あ、寝る前に飛行機に乗っていたっけ」


てっきり地上にいるものだと思ってしまった。


「私と離れてる間に、飛行魔法でも習得したのかい? そうじゃないなら、出た瞬間落ちていくだけだよ」


そのままhahahaと笑いだすエミリー。


「まあいい。もうじきアメリカにつくよ。そうしたら訓練が始まる。楽しみに待っててね」


これって絶対にヤバい状態じゃないのか?


俺はこれからどうなるんだ?


「日本に戻るって選択肢はないの?」


少ない希望にかけてみた。


「うん。燃料が足りないし、足りててもやらないよ」


「そんな」


一番捕まってはいけないいけない相手の、籠の鳥になってしまった。


高度数千メートルだから、ここから逃げることすらできない。


「着いたら私の仲間を紹介するよ。一緒に訓練する相手だから、仲良くしてあげてね」


金髪ロングの少女は笑顔で言った。

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