第167話回答

「それはですね……」


先輩の目線が泳ぐ。


確か恋愛経験を積ませるために、俺は先輩に会わされたんだったな。


「そうです。私たちは婚約したんです」


「そうです。え? 婚約?」


思わず同意してしまったが、身に覚えがない。


「しましたよね? 婚約」


ロリは鋭い視線を送ってきた。


「したのかな?」


誤魔化そうとする。


「一樹君はお金はないですし、将来たくさん稼げるとも思えません。しかし、私のことを少しは理解できてるようなので、養ってあげてもいいかと思いまして」


「それはまた……」


やたら上から目線の言い方。


しかし、反論できる内容ではなかった。


「そこまで進んだのね」


「ええ。ほかの男がだめだった時の、保険としてですが」


孫と祖母は再び無言で見つめあう。


「わかった。少しは大人になれたのね」


「だったら、私を後継者に」


先輩が熱望するような視線に。


「まだ引退しないわ。あと10年くらいわね」


「「え?」」


「もしかしてだけど、今までのことにあまり意味はないんですか?」


せっかく、あれだけ頑張ってマナ操作を身に着けたのに。


「いえ、あなたたちの努力は理解してる。10年くらい後に後継者を指名するとき、大きく反映するわね」


「はあ」


こうして、結果的にあまり意味のない俺と先輩の挑戦は終わりを告げた。


本当に意味があったかの答えは、10年くらい後に出るようだ。

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