第136話後継

「賀茂本家を継ぐってことは、分家も含めた一族全員の代表になる訳よ。分かってるの?」


「当然理解していますよ」


「一族の直系である本家の家督を継げば、分家すべてや、御三家としての責任を担う立場になる。いいわよね?」


「もちろんです」


「一族最強である魔女、その一番大事な役目を答えてみなさい」


「マナ適正が強い夫を迎え、優秀な世継ぎを育て、血を絶やさないことです」


「大正解。正直、ここまでパーフェクトな回答をするとは思わなかったわ」


「次期代表として当然です」


先輩は大きな胸を張る。


「だからこそあなたに、彼を紹介したのよ。十分一族に迎える資質はある」


「こいつがですか」


俺をちら見して言う先輩。


「しかし、どうして夫を一般人から選ぶのですか? 遠縁の分家からだってできますよね?」


魔女の一族は、常に強いマナ適正を持つものを選び、後継者になる子供を産んでいる。


そのために血の繋がりが薄い分家から選んだり、近い宗派から入り婿をしてきたらしい。


陰陽道の一族に、神道の術者を招き入れたことだってあるとか。


「彼はね、身元がしっかししているのよ」


「ほかの術者も同じですよね?」


「違うわ。彼は少しエッチで借金してるけど、野望や野心なんて全く縁がない。仮に婿にしても、一族を乗っ取るなんて絶対にないわね」


信頼されてると言うより、見下されてるんじゃないのか?


「名門である賀茂一族に、一般人を迎え入れる。その意味は分かりますよね?」


他の一族から見下されるってことだな。


「あなたの弟子にでもして、一族に迎えればいいでしょ? 師弟関係を越えた愛情よ」


「なに言ってるんだ? この人」


と思ったけど、口に出さないでおく。


「ですが、彼である必要も」


「あるわよ。手っとり早く手配できる、年の近い男の子は彼だけだもの」


「ですが、私は自分の夫を自分で決めます」


「なら、なおいいわね。彼を練習台にしてみたら?」

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