第119話興味

無理をいって大きめの体育館を借りた。


「シートが被されているな」


米軍によって設置された、大型のVRマシーン


壁際に置かれている。


見た目だけでも知りたかったが、軍事機密を徹底するらしい。


「残念だ。祖国に伝えたら、勲章がもらえたかもしれないのに」


「ボクも知りたかったね」


2人は俺のように純粋な興味で知ろうとしてるわけではないようだ。


外国から攻められることが多かったゆえ、他国の装備に関心があるらしい。


「では、これをかぶってよ」


シートの中から延びるコード。


その先に存在する、大きなヘルメットっぽい何か。


「これは? まさかあの、伝説の……」


「その作品ならアメリカでも大人気だ。似せて作ったんだよ」


「うれしいな」


日本の作品を取り上げてくれる。


「ヘルメットからも、コードが伸びているね」


「それは手足につけて。動きを読みとるんだ」


「近未来的でかっこいいな」


「喜んでないで、みんなこれを被りな。5人は重くなるけど、なんとかなるだろう。hahaha」


笑ってる彼女を後目に、俺たちはVR機器を手にする。


「勘違いしないでもらいたいが、現実の体はそのまま動くよ。あくまでその動きが、バーチャル空間のアバターに反映されるだけだ。それに五感に送るのではなく、視覚はゴーグルに映り、聴覚はスピーカーから」


「どういうことだ?」


SF的なものと縁がないサーシャが首を傾げる。


「わたくしもよく分かりません」


修行だらけの日々だからか、桜子まで。


「ボクが説明しよう。簡単に言うと、現実とヴァーチャルの自分がいるんだよ。現実の方が動くと、それをトレースしてヴァーチャルも同じ動きをする。いい?」


「何となくだが、理解できた」


「わたくしもです」


自称俺の嫁は詳しいようだ。


「納得できたらとっとと被る。ぶつかり合わないように離れて」


「アバターの出現位置と、現実の体の場所は関係ないの?」


「そういうことさ。下手すると、仲間同士で衝突するね」


彼女にせかされ、俺たちはVRヘルメットを被る。


広い空間を使い、全員の間隔は開いたはずだ。


「その前に、ログアウトの方法を知りたい」


クリアするまで現実に戻れないとか?


「いや、ヘルメットを外すだけだ」


全然、デスゲームじゃないね。


「全員準備ができたね。リンクスタート」


俺たちの視界が一変した。

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