第69話浴室

「えっと、ここだな」


基地内の廊下を歩き、自分の部屋を探す俺。


最初にこの基地に到着した時、荷物を置くために一度自分の部屋に一度着てはいる。


だが、その時は桜子の案内があってだ。


自分一人で来るのはこれが初めて。


廊下をウロウロしながら、部屋番号を確かめた。


「カギもちゃんと開く」


桜子に渡されたカギで、開錠。


違う部屋の鍵穴なら開かないし。


「ふう。やっと休めるな」


そのまま、大きいサイズのベッドに倒れこむ。


良い品質なのか、寝心地がいいな。


遠路はるばるやってきたら、キャラが濃いめの妹系ヒロインに出会うんだもの。


美人に育ってくれているのはうれしいが、本当に話を聞かない。


「やって来る可能性があるし、カギは閉めておこう」


来ないように言いくるめたが、俺は自分の妹が信じれない。


「でも。カギだけじゃなあ」


アイツは絶対に、合いかぎを持っているだろう。


そう考えながら扉を見ていると、あるものを発見した。


「これを使えばきっといい」


この基地には防犯のためなのか、各部屋にチェーンロックが付いている。


「絶対に安全という訳じゃないのだろうけど」


マイシスターは自分が守るべきこの基地の、備品ぐらいなら壊しかねない。


「それでも、壊すときには音がする」


万が一、桜子がこの部屋の扉を破壊して中に入ったとしても、

俺はそのことに気が付けるのだ。


不意打ちをくらうことはないだろうから、安心して休めるな。


「さあ、風呂に入るか」


浴室を見つめ、そう思う。


俺は貧乏だから特別なホテルに泊まったりしたことはあまりないが、修学旅行で使った経験があるので、シャワーはいけるだろう。


「昔、見たとおりだな」


シャワーに湯船。


扉を開けて中を確認したが、同じなので安心できた。


「お湯を溜めよう」


湯船の栓を閉め、シャワーでお湯を注ぎ込む。


待ってるのもなんなので、体を洗おう。


脱衣所で服を脱ぎ、再度浴室に入る。


体が冷えるので、扉は閉めておいた。


「これだと、音に気が付けないんじゃないのか?」


お湯をためる水音が、この部屋に響いている。


扉を閉めたので、外からの音が聞こえにくくなるしな。


「さすがに壊れたら気が付くか」


それ以前に、愛すべき妹が扉やチェーンを破壊するなどありえないだろう。


体を洗い終わったので、石鹸を洗い流そう。


浴室に置いてある手桶を使ってな。


そう思った瞬間であった。


「あら? わたくしに背中を流させてはくれないのですか?」


体にバスタオルを巻きつけただけの、半裸である妹の声が聞こえたのは。


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