第57話妹

とある国のある場所。


そこは異世界化した場所であった。


薄暗い中、AAを着た操縦者が戦っている。


操縦者は一人であるが、クリーチャ―は3体。


2足歩行する、トカゲのような外見だ。


手足を使い、攻撃する。


操縦者は囲まれていた。


しかし、臆した様子はない。


それは小柄な少女だった。

 

少女は先端に鉄球の付いた、長い棒をふるっている。

 

錘と呼ばれる武器だ。


 重くて扱いにくい武器である。


 AAがパワーアシストしてくれるとは言え、好んで使うものは少ない。


 しかし、威力は高く、射程もそれなりにある。


 当たれば小型のクリーチャ―など、ひとたまりもない。


 少女が使うには不向きな武器だ。


 だが、その少女は軽々と使いこなしていた。


 少女は錘をふる。


 それは、3体の1体の腹部にクリーンヒット。


 当然、そのクリーチャ―は地に伏せる。


「爽快ですわ」


 残る2体だが、多少怯みはした。


 しかし、逃げることはない。


 目の前の少女を、それからも襲い続ける。


「ふふ、どうやら、わたくしとの遊びを続けてくれるようですね」


 その少女は不釣り合いな笑みを浮かべる。


「なら、わたくしも特大の誠意でお答えしますわ」


 マナの流れが変わった。


 少女は魔法を使う。


 磁力のレールが形成された。


 錘はそれにひかれ、虚空を高速で動く。


 人間の筋力ではありえない、複雑な機動を描いた。


 そのまま残りの2体を吹き飛ばす。


「なかなか楽しめましたわよ」


 少女はすっきりしたような声であった。


「あら?」


通信が入ったようだ。


「お兄様がここに来られるのですね」


 満面の笑みで少女は言った。


「では、そろそろ戻りましょうか」


 少女は帰投する。


 少年と再会するため。


 最愛の兄に、また愛してもらうため。


「お兄様、わたくしのことを、覚えてくれているでしょうか?」


 少女は自嘲気味に言った。

 

 少年と少女たちは歩み続ける。


 未来を目指して。





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