第45話異変

「今いる土地が、豹変している」

 

俺とサーシャのデートから数日後。


 教官から、おかしなニュースが伝えられた。


「どういう意味ですか?」


 サーシャが食いつく。


「異世界化の土地が広まり始めた。おそらく、“核”となっているクリーチャ―が活動を始めたのだろうな」


「そうなると、この基地も危険であるということですか?」


「ああ。異世界化がここまで侵攻してくるかもしれない。ゆえに、我々は撤退計画を考えている。学園長もそうお考えのようだ」


「しかし、それではこの土地を見捨てることになります」


「あの町はどうなるんだ? 俺たちがデートした場所」


どこまで異世界化が広まるかは分からない。


だが、避難しないといけなくなる人の数は、多くなるだろう。


そうした難民の一人であるサーシャには、見過ごせる状況ではない。


あの町に住んでいる人も退避するのか?


「分かっている。今から避難命令を出すさ」


「しかし、それでは彼らの生活が……」


「だが、我々が全滅して何になる? だれも救えないだろ? ここは一旦退き、体制を立て直すべきだ」


「しかし……」


「お前の言いたいことは分かる。だがな、これはすでに決まったことだ。学園長の許可も得ている」


「学園長が?」


 あの人なら、そんなことをやらなそうなのに。

 

だからと言って、俺たちはあきららめれない。


「我々にやらせてください」


「何をだ?」


「“核”となっているクリーチャ―の討伐です」


「バカを言うな。今は情報が足りない。どこに“核”クリーチャ―がいるかすらわからないのだぞ」


 異世界化した土地は、通常の探査は通じないからな。


 マナの動きを読み取り、どこにいるか推測するぐらいしかできない。


「仮に発見できても、簡単に倒せるわけがない。どんな能力かも不明。お前らなど、返り討ちにあうぞ」


「やってみないと分からないでしょ?」


 俺は叫んだ。


「それに、これはいいチャンスになりますよね? 限界に近い状態で、俺は活動するんですから。きっと、いいデーターが集まるでしょう。俺が死んでも、有効に活用してくださいね」


 教官は眉をひそめる。


「データーについてはその通りになるだろう。だが、私はお前たちの教官だ。生徒を守る義務がある」


「なら、俺たちが勝手に行く。止めないでください」


「おい、待て。それだと脱走と変わらないぞ」


「関係ない。そう思いたいなら、好きにしてください」


 俺とサーシャは格納庫へと走る。


「待て、お前たち」


 後ろから教官の声がした。


「すいません」


 サーシャが後ろに何かを投げた。


 硬い音がする


「まさか……」


 教官は最後まで言い切れなかった。


 それが爆発する。


 白い煙が出た。


「スモークグレネード」


 こんなものまで使って。


 成功しても、謹慎処分になるぞ。

 

というか、サーシャはこんなものを持ち歩いているのか。


「関係ない。私はやりたいことをやるだけだ」


「俺もだよ」


俺たちは走り出す。


格納庫に向かって。

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