第41話「四つの門」

この世界には『ゲート』と呼ばれる門が存在している。

一つは異界へと繋ぐ事の出来る門。

一つは天界へと繋ぐ事の出来る門。

一つは地獄へと繋ぐ事の出来る門。

そして最後の一つが、次元の狭間へと繋ぐ事の出来る門。

今回の騒動中に起きた現象は、その四つの門が同時に一度開いた事。

これは前例の無い事である。

「ディーネ、質問良いか?」

「何だ?アルフレドよ」

ディーネは腕を組んで、アルフレドさんにそう言った。

「具体的にその四つの門が開くと、世界はどうなるんだ?」

「結論から言えば、崩壊するだろうな」

その場にいる全員が言葉を失った。

「……それでディーネさん、解決方法はあるのですか?」

メイドのルーシィさんが、手をあげて言った。

ディーネは目を瞑って言葉を続けた。

「崩壊と言っても、すぐに崩壊する訳ではない。門は開いたが、今は柱が見えていないのであれば無事だ。だがもう一度開くとなると、それ相応の被害が出るだろうな。解決方法とやらも詳しくは知らないが、あるにはあるが……」

「……?」

目を細めたまま、チラッと僕に視線を動かして正面に戻してしまった。

何が何だか分からないと思っていた時、僕の目の前に彼女は現れたのである。

『――世の出番か?迷える愚かな者共よ』

一瞬の出来事で驚いたが、ここにいる者全員がこの人物を知っている。

……イザベル・フォルネステイン。

「な、何でここに?」

『お、サツキではないか。会いたかったぞぉ少年♪』

僕の姿を見つけるなり、今まで見た事のない表情で抱き着いて来た。

「ちょっと!?何いきなり抱き着いてるのよ魔女!」

『ん?何だ小娘、貴様もいたのか』

「いたわよ!それにアタシにはアリアっていう名前があるのよ!」

僕の肩に抱きついたまま、イザベルはアリアと口喧嘩をし始める。

肩が捕まれていて、僕の動きは制限されてしまっているので動けない。

「(はぁ、仕方ないなぁ)」

僕は溜息を吐いてから、アリアとイザベルの腕を自分の身体から払った。

体勢を崩されたアリアは床に尻餅をつき、イザベルはひっくり返されたように大の字で倒れている。

「――ごめんね、二人とも。今は大事な話っぽいから、ちょっと大人しくしてくれるかな?」

「我が主、ちょっと怒っておるだろ?」

「ううん。怒ってないよ。ねぇ二人とも♪」

「『は、はい』」

僕の言う事が分かってくれたらしく、二人は部屋の片隅で体育座りする。

ただ雰囲気が暗くなっているので、やり過ぎただろうか。

「――それでディーネ、僕は何をすればいい?」

「ん、いや我が主がする事は何もない。むしろ何もしなくて」

「それはディーネの見解でしょ?僕が聞いているのは、本来必要な手順。この世界がもし本当に崩壊するなら、僕は出来る事があるなら協力したい。けどそれでもし可能性が低い事なら、他の案を探せばいいだけだよ。違うかな?」

「そ、それはそうだが……」

僕は思った事をそのまま言ったが、ディーネは何故か言葉を選んでいる。

いや言葉を選ぶというより、何かを隠すように目を合わせてくれない様子だ。

「――……分かった。僕は席を外そう。それなら皆に話せるよね?」

「な、何故そうなるのだ!私はただ……ただ……」

「話が終わったら呼んで。声の届く範囲にはいるから」

「おい、サツキ!」

アルフレドさんの声が聞こえたが、僕は何故かあの場には居たくなかった。

居てはならない訳じゃない。

ただ僕自身が、あの場から逃げたかっただけだ。

聖堂アルカディアは、王都で城の隣に位置している。

だから声が届くというと――宿屋ぐらいかな。

僕はそう思って、聖堂から離れる事にしたのだった――。


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「王都で中央会議?」

街の中を歩いていた時、フランから聞いた言葉を聞き返した。

「ええ、聖堂アルカディアという場所があります。その場では飲食をしながら行われる、いわば社交界と呼ぶべき場所。その催しの際に行われているのが、国の責任者ったいが集まって行われるのが中央会議です」

「それにフィリスも参加しなきゃいけないの?」

「ええ。フィリスは会議に出る資格を持っている実力者の一人ですよ。噂では本来、七聖剣セブンスアビスと呼ばれる者たちも集まるんだそうですよ?」

街中で口外してはいけない話をしているけど問題はないのです。

何故ならフランが、フィリスとフランの周囲に障壁しょうへきを張っています。

声は周囲には聞こえていないし、強襲される際の魔法も通さない優れものなのです。

「その所為でフィリスにも手紙が来たんだね。王都からフィリスたちの国まで二日は掛かるのにね。スコーリア姫も大変だね」

「セブンスアビスにはフィリスも入っているのだから、他人事には出来ない案件です。他にも集まるのであれば、今のセブンスアビスの者に会えるかもしれませんよ?」

七聖剣セブンスアビスのメンバーは、それぞれ一つの属性の頂点に君臨している実力者と言われているらしいのです。

フィリスは『地』で入っているのですが、他の属性魔法は『火』『水』『風』『いかずち』『地』『光』『闇』のそれぞれに在席している。

ちなみに言えば、王都にいるスコーリア姫は『風』に在席してるです。

「王都へ到着するまであと一日は必要ですね。今回はこの町の宿に行きましょう」

「は~い♪フランの料理が食べれないのは嫌だけど、ベッドがあるなら許してあげる」

宿屋にはちゃんとベッドもあって、フィリスは満足なのです。

ベッドの上で布にくるまり、フィリスは夢の世界へと向かうのだった――。



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