第59話 最後の夜

 今日は台湾最後の夜だから、私もちょっと頑張ろうと思って、違う下着を選んだ。

「いくつ、勝負下着を持って来たんだい?」

「3つです。これが最後」

 なんだか、智さんには、私の心の中を見透かされている感じがする。

 智さんがいつものように愛撫してくれるけど、そのうち私の下の方に移動していく。

 智さんは、私の下着の横の紐を引いて下着を脱がし、私の中心に唇を持って来た。

「ああ、あなた、ダメです。汚い」

 智さんは今朝のお返しとばかり私を責め立てる。

「ああ、だ、だめ」

 頭の中が真っ白になる。

 智さんの顔が、私の前に来た。

「もう、恥ずかしい」

「今朝のお返しだよ」

「えへへ、良かった」

 そのまま抱き合い、口付けを求める。

 智さんは私と唇を合わせるけど、その唇は徐々に胸に行く。

「ああ」

 私の胸を智さんの唇が責め立てる。

「あ、だ、だめ」

 また、頭の中が真っ白になる。

「どうした?」

「えへへ、恥ずかしい。もう、私の恥ずかしい姿を知ってるのは、あなただけですからね」

「彩の可愛い姿を知っているのも、俺だけだと思う」

「そうね、いっぱい可愛くして下さい」

 智さんは、また私の中心部に来た。


「ああ、もうお願い。あなた、お願い」

 二人向かい合い、一緒になり、智さんが抱きしめてくれると、私は女としての幸せを数度得た。

「ねえ、あなた、私、今日ほど女として生まれて良かったと思った事ない」

「なんか古い言い方だな」

「うん、そうだけど、でも分かったような気がする。

 好きな人が喜ぶ事をして、抱かれるってすごい幸せだと思う。

 今、私は幸せだと思う」

「男としては、良く分からないな」

「いいの、分からなくても。あなたも幸せって感じてくれればそれで充分」

「俺は彩が居てくれて幸せだよ」

「あなたが幸せなら私も幸せ、ウフフ」

「さて、寝ようか。明日は帰らなきゃ」

「ねえ、また来ましょう」

「そうだな、また来ようか」

「今度は3人かもしれない」

「えっ、それって…」

「ううん、まだよ、でもいつかはね」

「そうだな、彩に似ると可愛い女の子だろうな」

「あなたに似ると?」

「女の子だったら不憫だから、男の子の方がいい」

「ううん、そんな事はないわ。私の力で可愛いくしてみせる」

「母親って、そんな事もできるのか?」

「そうよ、女体って神秘なの」

「たしかにそうだな」

 ベッドの中でそんな話をしていたけど、そのうち二人とも眠ってしまった。


 飛行機が14時過ぎなので、ホテルを11時にチェックアウトすることにして、それまでは二人でホテル周辺を散策する。

 台北駅の地下街にはいろんなお店があって、雑貨屋も多い。

「なんだか、ここに来れば、お土産なんかも全部揃うって感じだな」

「ほんと、焦ってあっちこっちで買わなくても良かったかも」

 パイナップルケーキでもいろんな物がある。

 智さんは、ホテル近くの菓子店で会社用のパイナップルケーキを買っている。

 私も学校の教授や友だちにパイナップルケーキを買う。


 台北駅の地下街とホテルの地下で買ったお土産を持って、部屋に持って帰る。

 部屋でスーツケースに入れようとするけど、なかなか入らない。

「ねえ、あなたのスーツケースにまだ入ります?」

 ちょっと買い過ぎたかなぁ。

「ああ、どうにか入るよ」

 智さんのスーツケースにも入れて貰うけど、それでも全部は入らない。

「あーん、どうしよう」

「こんなこともあろうかと…」

 智さんは予備で持って来た、畳めるバッグを取り出した。

「さすが、私の旦那さま。良くやった」

「何が良くやっただ」

「もう褒めたのに」

「いや、褒めてない」

「褒めた」

「じゃ、口付けしてくれたら、褒めた事にする」

「ん…」

 私は背伸びをすると、智さんは私の唇に合わせてきた。

「えへへ」

「ほら、早くするぞ」

 出発までそう時間もない。


 私たちは、お土産で重くなったスーツケースを引きずって、空港行の地下鉄に向かう。

 桃園空港に到着したのは、出発の2時間前だった。

 搭乗手続きが済んだら、空港内のショップを見て回るけど、値段が高いので、とても買えない。

 両替した台湾元は、ほとんど手元に残っていないから。

 出発の待合室で羽田行きの飛行機を待っていると、二人連れの女性が声をかけてきた。

「こんにちわ」

「こんにちわ」

 見ると九フンへのオプショナルツアーで、一緒になった学生の二人だ。

「この飛行機だったんですね」

「どうでした?台湾は?」

 私は彼女たちと話をするけど、智さんは私たちの会話に入って来ようとはしない。

 やっぱり、同い年同士だと話が楽しい。思わず笑ってしまう。

 だけど、彼女たちの話が幼く感じるのは、私の旦那さまが大人で、私がその会話に慣れているからかしら。

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