第14話 ヒロシ無双!誰か彼を止めろ!
「キョォォォォオオオオオ!!!」
男の赤髪が両腕を頭上でクロスして力を溜めて低姿勢で一気に突っ込んできた!
その動きはさながら獣をイメージさせリミッターが外されているその動きにクリスは一歩下がった。
だが・・・
ビターン!
赤髪の足が地面に張り付き顔面から地面にダイブした。
ドッキリで旅館の入り口のスリッパが固定されていたような状況にチラリとヒロシの顔を見るクリス。
何故か舌をぺロリと出しながら親指を立てるヒロシに気を抜いてしまった。
「ウァアアアアアア!!!」
女の赤髪が飛び上がり空中で仰け反り片手を突き出しながら急降下してきたのだ!
まるで鳥が獲物を狩るイメージの動きに驚くクリスであったが・・・
更に上から降ってきた粘着性の液体を被ってそのまま地面に墜落する。
しかも男の方と同じようにその液体は地面に女を固定して身動きをとれなくした。
「あの・・・ヒロシさん・・・」
クリスの白い目がヒロシに向けられる。
粘着性の液体はスライムの様で赤髪の女の衣類が見る見る溶け出していたのだ。
それも皮膚は溶かさず衣類だけを溶かすというこの作品はエロじゃないんだと訴えそうな目に口笛を吹きながら知らぬ存ぜぬを貫くヒロシ。
その手にはカメラ撮影モードになっているスマホが握られているのだがクリスにはそれが何か分からなかった。
「ほらっ止め刺しときな」
「はぁ・・・分かりましたよ・・・」
クリスが倒す相手と言ったのにも関わらず全て解決してしまったヒロシに何を求めても無駄だと判断したクリスは首をトンっと叩き二人の意識を奪い去った。
女の赤髪は特にうつ伏せになっていたのが幸いした。
何故か下着だけは溶かされないが肌を露出しており視覚的にも未成年に優しく無いのだ。
「んじゃ行くか」
ヒロシの軽い口調に今自分達が戦っているのは自分の一族を滅ぼした組織だと言うことを忘れそうになるクリスだがこの奥にその親玉が居ると確信し奥へ進む。
そして、その豪華な扉が自動で開きそこに3人の人間が居た。
その中央に立つその男を見てクリスが怒りを露にする!
「貴様!」
「ほぅ、お前は・・・生きていたのか」
丸いサングラスをしてスーツを着こなすその男こそがクリスの一族を皆殺しにした時に指揮をしていた男である。
クリスの姿を見て拍手をする左の男が一歩前に出た。
「良くぞここまで辿り着いた。どうだ?お前達の力をこのロチの為に役立てる気は無いか?」
如何にも胡散臭い一人だけ浮いたローブの様な物を着こなすその男にヒロシが告げた。
「あーとりあえずこれだけは言っておく、中央のお前以外に用は無いからさっさと帰った方が身の為だぞ」
その手にはいつの間にか銃が握られていた。
ワルサーP-38
かの有名なルパンの3世が愛用するその銃をゆっくりとその男に向けた。
だが銃を向けられたというのに全く同様する気配の無い男は言い返した。
「銃?そんな物がこの私に通用すると思うのか?」
「はっお前は何も分かっちゃいないな」
そう言って銃を撃ったヒロシであったがその弾丸は見えない強化ガラスによって防がれた。
その様子にクリスが驚愕する、ヒロシの攻撃が防がれたのに驚いたのだ。
この強化ガラス、ロチの科学者にして錬金術師にしてアルバイトのその男マモーの手によって生み出された物なのである。
その強度はダイヤモンドを上回る恐るべき物であった。
「ひっひっひっそんな物は通用しないよ」
嬉しそうに告げるその男に向けてヒロシは再び銃を撃つ!
だが同じ様に防がれる、だがヒロシは構わず撃ち続けた。
そして・・・
ピシッ!
ガラスにヒビが入った!
その様子を見て驚きに包まれる3人。
それもそうだろう、いつの間にかヒロシの服装が白いスーツ姿となり太い眉毛に濃い揉み上げのおっさんに変わっていたからだ!
しかもその精密射撃は全て同じ1点を打ち抜いており弾丸は最後の1発でめり込んでいた弾丸を押して貫いた!
「ば・・・ばかな・・・」
眉間にその弾丸を喰らうと共に見えないガラスは崩壊し左に立っていた男が崩れ落ちた。
残る2人も驚愕に包まれていた。
その強化ガラスに守られていれば自分達は安全だと判断していたからだ。
この部屋には毒ガスが発生する装置が設置されており3人はヒロシとクリスを毒殺しようと罠に嵌めていた。
だが強化ガラスが破壊された事で毒ガスを発生させれば自分達も危険な状況となってしまったのだ。
「さて、クリス。お前はアイツを殺して復讐するんだろ?俺はそっちのやつと遊んでるわ」
そう言ってヒロシが視線を向けた先に立っているムキムキの男。
親玉のボディガードなのだろうがヒロシのここまでの戦いをカメラを通して見ていたので自分がどうにも出来ない事は理解していた。
そして、禁断のそれを使用してしまう。
注射器の様な物を自らの腕に注入する男。
「ぐぁああああああああおおおおおおおおお!!!!」
それはアルバイトのマモーが作り出した禁断の生物兵器、使用すればその者の命と引き換えに強力な力を得る事が出来る薬であった。
ただでさえムキムキだったその男は更に巨大化した筋肉で衣服を破り充血した目をヒロシに向ける。
「ぐふーーーごろず!」
笑みを浮かべてヒロシはいつの間にか元に戻っていた服装をパンパンとはたいて野球帽の様な帽子を被り直し一言告げる。
「お前の小宇宙(コスモ)では俺は越えられない、所詮音速止まりだ!」
その言葉を言い終わると共にムキムキの男は前のめりに倒れる。
誰も気付かなかった。
いつの間にかヒロシの背後にスタンドの様に立つその存在を・・・
黄色い体に一つ目の悪魔、その名は『アーリマン』
その魔物の得意技とされる『死の宣告』
それは対象に死の10カウントを付与して10秒後にどんな対策をしてようが即死するという恐るべき力を持つ能力である。
あの有名なデスなノートは相手の名前と顔が分からなければ使用できない事を考えればある意味上位互換ともいえる力であった。
勿論、ヒロシはそっちのノートも持っているのだが死神に取り付かれるのを嫌う為普段は使用しないのである。
ちなみに10秒以内に視界から消えるように逃げれば解除されると言う特徴を知っている者は意外と多い。
「さて、こっちは終わったんだが・・・」
そう言ってクリスの方を見るとヒロシの異常な行動に2人して目を丸くして立っている2人・・・
既に戦うどころの状況ではなくなっていた。
ヒロシの後ろの悪魔に睨まれると死ぬと理解した為に身動きが取れなくなっていたのだ。
それに気付いたヒロシはアーリマンを消して両手を合わせた!
「はいっ休憩は終了!そろそろ本番行くよ!」
まるで部活の再開を指揮する部長の様な言葉を告げ二人の戦いを見守ろうと腕を組んで見守りだすヒロシ。
ロチの親玉である男、その名を『ガイデル』と言うのだが既に戦闘意欲はなくなっていた。
それも仕方ないだろう、高らかに何とかできると宣言していたアルバイトのマモーすらも簡単に倒され秘密兵器を使用した最強の部下も手も足も出せずに即死させられたのだ。
ガイデルは両腕を上げて降参の姿勢を取った。
だがそれは悪手であった。
ヒロシはそれを見て勘違いしたのだ。
「き、貴様!この状況で元気玉だと?!」
ヒロシの焦りにクリスもそれを止めさせようと飛び出した!
「えっ?えっ?」
ガイデルは予期せぬ状況の変化に焦りクリスの拳がガイデルの顔面を捉えた!
彼の最後の言葉はたった一つ・・・
「元気玉・・・って・・・なに?」
そして、ロチは崩壊したのであった。
クリスは復讐を果たしヒロシと共にビルを後にする。
ビルを出て歩く2人の前にそいつは待っていた。
「まさかここまで思惑通りに動いてくれるとはね・・・」
それは服の色と髪の色が違うがオロのメンバーであった女シエルであった。
彼女が右手を開くとその手に放電現象が発生する。
「死ねっ!」
まさに電光石火!
電気の速度は高速に最も近く真空中であれば光速と等しいと言われている。
それがクリスの体を貫いた!
どれ程鍛えられていようがどれ程強化されていようが人間はあっけなく死ぬ。
それを表すようにクリスはそのままその場に崩れ落ちた。
「クリス!」
ヒロシが叫ぶと同時にシエルが高らかに笑い出す。
そして、その体が宙に浮いた。
「やった・・・我が体内に全ての8人の力が集まった!私は・・・神になるのだ!」
そして、彼女の体から物凄い衝撃が周囲に放たれ周囲の地面は吹き飛びその場は更地と化した。
その場に残りクリスの体を守りながら耐え抜いたヒロシは周囲の地形の変化を見て空に浮かぶシエルに向かって叫んだ。
「ナッパのクイっかよ?!」
何処までも緊張感の無い彼であった。
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