第25話 正月とお祖父ちゃん家

 年越しが終わればお正月!

 三が日は皆親戚に会いに行ったりするそうなので、次に皆と会えるのは一月四日に私の家で行う新年会になります。

 あれ? 私の家、パーティー開きすぎ?


 ……こほん。

 そして私たち諸弓家も例外では無く、一月一日の今日、車で二時間程の距離にあるお祖父ちゃんの家へ来ています。

 普段あまり遠出をしないから、旅行気分で楽しいですね!


「おじーちゃーん!」

「お祖父ちゃん来たよー」


 車から勢いよく飛び出していったメグちゃんに続いて大きな門を通り抜けます。

 お祖父ちゃんの家は築百年を超える武家屋敷で周りを囲む白塗りの塀が実にかっこいい。

 塀の門を抜けると瓦屋根の平屋が建っていて、その入り口には皺だらけの顔をこれでもかと緩ませたお祖父ちゃんが立っていました。


 ――さて、ここで私の家系を再確認しましょう。

 第一話……こほんこほん。

 最初に伝えた通り私こと諸弓千佳と天使、いやメグちゃんこと諸弓恵は四つの血を持つクォーターです。

 日本とドイツのハーフであるお母さんと、ロシアとアメリカのお父さんという血の繋がりですね。

 そしてお母さんは綺麗な黒髪、お父さんは綺麗な白髪で、私もメグちゃんもお父さんの白髪を継いでいます。

 その代わりかどうかは知りませんが、顔付きはお母さんそっくりだとよく言われますね。


 そして今日来たのは、お母さんのお父さん、日本人のお祖父ちゃんの家なのです。




「おじーちゃーん!」

「おおっ、孫よー!」


 もう八十歳にもなるお祖父ちゃんですが、相変わらず元気そうです。

 ほら見てごらん?

 突撃していったメグちゃんを高く抱き上げてクルクルと回転しています。

 ……いや、その歳でその足腰は強すぎませんか?

 武家屋敷の一部では剣道場を開いているって言ってたし、そのお陰なの?

 まぁメグちゃんもお祖父ちゃんも楽しそうなので良しとしましょう。


 今日お祖父ちゃんの家に集まるのは私たちの家族だけです。

 毎年お母さんのお兄さんの家族も来ているのですが、今年は予定があって来られないそうです。

 なのでこうして、年明けにお祖母ちゃんの前で手を合わせることが出来るのも私たちだけ。


「お祖母ちゃん、あけましておめでとう」


 二年前に病気で無くなったドイツ人のお祖母ちゃん。

 私もメグちゃんもお世話になって、何よりお祖母ちゃんの作るフラムクーヘンという料理は絶品でした。

 クリームを使ったピザのような料理で、いつかはお酒と一緒に食べたいなぁと思っていたのです。

 お父さんたちが美味しそうにおつまみとして食べているのを見てから、大人になったらやりたいことの一つだったんだけどな……。


 そんなお母さんの料理の師匠でもあるお祖母ちゃんの遺影に手を合わせて、挨拶をします。

 何だかお祖母ちゃんが返事を返してくれているような、そんな気分。

 お祖母ちゃんも来世でいい人生を送っていますように!


 お祖母ちゃんへの挨拶を終えた後は、お祖父ちゃんにお年玉を貰ってから沢山お話しをして一泊します。

 家から持って来ていたお母さんお手製のおせちを食べてのんびりしていると、台所からエプロンを外しながらお母さんがやってきました。


「二人共、お風呂沸いたから入って来て?」

「うん、分かった」

「はーい!」


 お母さんの言葉に従ってメグちゃんを連れてお風呂へと向かいます。

 あ、お父さんとお祖父ちゃんは絶賛酒盛り中なので放っておきましょう。

 普段からお風呂はメグちゃんと一緒に入っていて、自宅の時は花ちゃんもやって来ることが多いです。

 唯、まだまだ小学一年生なのでお父さんやお母さんと一緒に入ることも多いですけどね!


「……お姉ちゃん、脱がせて?」


 ……。

 ……グハッ!?……何て破壊力なのっ!?

 思わず一瞬だけ思考が停止してしまったよ!

 しかしメグちゃんは真面目にお姉ちゃんに甘えてくれているのです。

 私が邪な考えをしてはいけません!


「はーいメグちゃん、ばんざーい」

「ばんざーい!」


 両手を上げたメグちゃんの黄色いワンピースを脱がしていきます。

 首元のボタンを外す時に肌に少しだけ触れて、こそばゆい感触に身をくねらせるメグちゃんを堪能します。

 いや待って、違うの、これはあれだから、邪な気持ちとかじゃなくてですねあの。


 次に裾を持って上に上げることで、ワンピースをひっくり返すように脱がしていきます。

 まだ胸は発達していないから、これでメグちゃんが今着ているのは真っ白なパンツだけ。

 膨らみのない小さな胸を見詰め……るのを我慢して、ここからはメグちゃん一人で脱いでもらいます。

 でも転んだりしたら危ないので、しっかりと見ておきます。いやいや、これは姉として妹を守る為ですから! 邪な気持ちなんてそんな!


 無事に裸になれたメグちゃんに急かされて私も服を脱いでいきます。

 今日はメグちゃんに合わせて私もワンピースを着ていて、色違いの黒色です。

 髪の白色と黒色の服は綺麗にバランスが取れるので他にも沢山黒い服を持っていたりします。


 ……下着の色?

 いや、恥ずかしいから言わないよ?

 これでも女の子だからね! 心は男の子だけど!


「私もお姉ちゃんみたいなピンクのほしいー!」

「ふぇっ!?」


 まさかの味方からの誤射だと!?……そ、そうですよ!

 お母さんが似合うって言うから仕方無くなんです!


 その後お風呂に酔っ払ったお祖父ちゃんが乱入してきたり、メグちゃんと一緒にお祖父ちゃんの背中を流したりするのでした。

 あ、メグちゃんの背中を流す役目は譲らないよ? 例えお祖父ちゃんでもね!

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