こんなイケメンカメコは許せない
自慢じゃないけど、ぼくは年齢=彼女いない歴22年。
『草食系男子』なんて言い訳は、したくない。
ぼくだって心の底では、『可愛い彼女がほしい』って願ってるからだ。
そんな、女性に縁がないぼくを哀れんでか、20歳の誕生日祝いに、『祝!
その時以来、ぼくは風俗には行ってない。
そういうのは、女の人を性処理目的で利用するみたいでイヤだったのと、リアルの女性には慣れてなくて、上手く会話を続けられないからだ。
女の人、、、
特に素敵な若い女性に対すると、『なにか気の利いた事話さなくちゃ』というプレッシャーがかかって、やたら緊張してしまう。
それで、うまくしゃべれないでいると、『不快なんじゃないだろうか』と不安になり、、余計にプレッシャーがかかってしゃべれなくなる、負のスパイラルに陥ってしまう。
こんなんで、恋とかできるわけがない。
そんなぼくが、女の子を部屋に連れ込んだからといって、そうそうコトが上手くいくものなのか?
『無理矢理』なんて彼女は言ってたけど、よく考えたらぼくにはそんな事はできないと思うし、する度胸もないと思う。
それともぼくって、もしかして、酒が入ると人格が変わるタイプ?
とりあえずぼくは、昨夜の記憶を一生懸命辿ってみた。
昨夜はコミケの打ち上げで、ヨシキといっしょに居酒屋を何軒かはしごしたっけ。
あいつはオタクでカメコのくせに、細身で背も高く顔もいいし、女の子とでもスムーズに会話できて、女性のコスプレイヤーには抜群の人気がある。(その分男の敵は多いが)
昨夜も、ぼくが密かに憧れてるレイヤーの美咲麗奈と合流して、いっしょに呑んで、、、
ヨシキは麗奈ちゃんと盛り上がってたが、ぼくはほとんど手酌だったような気がする。
それからの記憶が
とりあえずヤツがなにか知ってるかもと思い、ぼくはヨシキにメッセージを送ってみた。
『昨夜の記憶が飛んでる。呑んだ後ぼく達どうしたっけ?』
返事はすぐに来た。
『オレは麗奈とホテルに個撮に行った。おまえは店の前からタクシーで帰ったぞ』
お互い仕事の合間に、メッセージを交換しあう。
『タクシーにはぼくひとりで乗ったか?』
『他に誰と乗るんだ?』
『中学生くらいの女の子とか』
『妄想乙』
『実は、今朝目が醒めたら女の子が横で寝てて…』
そう切り出して、ぼくは今日の事を打ち明けた。
『マジ? ありえね~! もっとkwsk(詳しく)!』
という訳で、バイトが終わる頃、ヨシキがクルマで迎えに来る事になった。
部屋に置いてきた女の子の事が気になって、今日は仕事がろくに手につかず、いろんな失敗をやらかしてしまった。
早く終業時間にならないかと気ばかり焦って、仕事に集中できない。
こうしていると悪い方向にばかり、妄想が膨らんでしまう。
今頃ぼくの部屋のめぼしい金目のものは、いっさいがっさい少女に持ち去られて、売り飛ばされてるかもしれない。
6時のバイト終了時間きっかりに、ぼくは書店を飛び出した。
『もう帰るのか?』と言わんばかりの、支配人の冷たい目線なんて、今はどうでもいい。
ヨシキはもう来ていた。
駐車場で待機していたの黒の『TOYOTA bB』に、ぼくは急いで乗り込んだ。
「それでミノル。ほんとに目が覚めたらJCが隣に寝て、、、」
「ヨシキ! 本当に美咲麗奈ちゃんとホテルで個撮したのか? どうしてそんな流れになったんだ?」
クルマに乗るなり訊いてきたヨシキの質問を遮り、逆にぼくから問いを浴びせた。
うちにいる女の子の件もだけど、麗奈ちゃんの事も気になる。
部屋に帰るまで、どうせヨシキから質問攻めにあうんだ。だったら麗奈ちゃんの事を、先に訊いておきたい。
『待ってました』とばかりに、ヨシキは浮かれた声で喋りだす。
「麗奈っていつもイベントじゃ、カメコがたかってるじゃん。昨日のコミケでも、カメコどもが行列を作って、あまり撮れなかっただろ。
おまえと三人で呑んでる時に、麗奈がさ、『イベントだけじゃ足りなかったから、もっと撮ってほしいな』って言うから、『じゃあ個撮しよう』って流れになって、あの後ラブホに行って撮ったんだ。ボカロ中心にいろいろ撮らせてもらったけど、さすがにホテルの中だったし、麗奈も途中から大胆になってきて、かなりエロいショットも撮らせてもらったぜ」
「そっ、そのあとはどうしたんだ?」
「野暮な事訊くなよ。二人とも酔ってたし、もう電車もなかったからそのままベッドに入って、ヤっちゃったよ」
「あっ、あの麗奈ちゃんと?! 人気レイヤーなのに?」
「ま。オレの写真がすごいって事かな。ついでに男としても、な」
ドヤ顔で運転しながら、ヨシキは憎々しげに言い放った。
まあ、こいつの写真は確かに、他のカメコとは明らかに一線を画すくらい上手くて女の子好みだし、実際、レイヤーからの撮影の依頼も多いし、女の子の扱いも手慣れてるけど、あの麗奈ちゃんを落とすとは、、、 親友とはいえ、やっぱりムカつく。
「じゃあ、麗奈ちゃんとつきあうのか? 前の彼女はどうするんだ?」
「前カノ? アイツとは別に恋人とかじゃなかったし」
「でも、つきあってたんだろ?」
「セフレだよ」
「セッ、セフレ?」
「オレ、彼女作らない主義なんだ」
「はぁ?」
「麗奈だって別にカノジョじゃないし。たまたまそういう流れになっただけで、あいつもそう思ってるだろうしな」
「…」
「面倒じゃん、彼女って。
マメに連絡しないといけないし、機嫌とらないとすぐむくれるし、誕生日だのクリスマスだのイベントに拘るし、他の女の写真とか撮ったり、飯食いに行ったりしたくらいで、すぐ嫉妬して『浮気だ!』とか騒ぐし、、、 うざいんだよ」
「…」
「だったら、特定の彼女とか作らずに、都合のいい時に好きな相手と会って遊んだ方が、気が楽じゃん。オレって基本的に、誰かに縛られるのって、イヤなんだよな」
「…」
自分の両手がグーになり、ぶん殴ってやりたいのを、ぼくはなんとか我慢した。
…ったく、こいつは我が儘過ぎる!
こんなチャラい性格なのに、たくさんの女の子が寄ってくるなんて、世の中不公平過ぎる!
こんないい加減な男は、いつか絶対ひどい目に遭うはずだ。
最後は必ず、誠実な人間が勝つ、、、 と信じたい!
つづく
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