第9話 爺ちゃんと父さん

「いよいよ爺ちゃんとの遭遇だな……!」

「会いに行ってその言い方はないんじゃないですか?」


 確かに、今のは珍獣とあった時のリアクションだったな。

 病室に入り、爺ちゃんのいる部屋へと入った。


「おーっす、爺ちゃん元気か? 久しぶりに遊びに来た……ぞ……何やってんだよ」


 病室に入ると、爺ちゃんは寝転びながら女性看護師にセクハラをしていた。


「お、来たか、ワシじゃよワシ! 元気そうじゃろ? ほほほほほ」

「全くだよ、ほんとに三年後死ぬんか?」

「唐突じゃな……。まぁ死ぬんじゃない? なんじゃ、心配してくれとったのか? 嬉しいこった」


 爺ちゃんは変わらないなあ。


「それより、お主の隣のお嬢さんはなんじゃ? 彼女だったりしたら笑っちゃうの。ほほほほほ」

「はじめまして、竜希さんの彼女の陽葵と申します。今後ともよろしくお願いします」


 相変わらず陽葵は礼儀正しいよな……。

 流石お嬢さまだよ。

 この発言を聞き、爺ちゃんは驚愕の表情をした後に喜んでくれた。


「あんたみたいなお嬢さんがこんなちっぽけな竜希と付き合ってくれるなんて、世も末じゃのぉ……」

「なんてこと言うんだよ! 俺にだって魅力があって陽葵が付き合ってくれてるんだぜ? な、陽葵」

「………そうかもしれませんね。はい、きっとそうです」


 あれ、さっきの長い間は何?

 これもしかして好きなの俺だけでしたパターンで終わらないよね?

 爺ちゃんは笑いながも空気を察してか、話を変えた。


「竜希、唯衣とはどうなったんじゃ?」

「え、唯衣? 特に何も無い幼馴染だけど? あ! 部活に成海ってやつが入ってきてさー、なんかめっちゃ女子っぽい……ん? どしたの?」


 成海の話をした途端、爺ちゃんの表情は変わった。

 暗い方に。


「そうか、アイツにあってしまったのか。ということは、お主の記憶が消えてるのも知っておるのか?」

「……? そら知ってるでしょうよ、ないんだから。あーでも成海はなんでなくなったのか知ってたっぽいな、教えてくれやんかったけど」


 何だこの暗い雰囲気……。

 触れてはいけない部分に触れてしまったのか!?

 そして、爺ちゃんが知るはずのないことを言ってきた。


「きっと三年後に教えるとか言ったんじゃろ。アイツらしいなあ」

「!? な、なんで知ってんだよ、超能力者か? そうなんだろ??」

「あのー、騒ぐようでしたら病室を出てもらえます? すみませんねぇ」


 看護師のお姉さんにそう言われてしまったので、大人しく出ていこうとすると。


「竜希、また今度遊びに来いよ。待ってるぜ!」

「爺ちゃん……大人しく寝てて」


 俺はそう言い残すと、病室を後にした。


 現在、陽葵の墓参り向かっているのだが。


「おい、陽葵の父さんめっちゃついてくるじゃないか。バレバレだし、なんか言ってやった方がいいんじゃないか?」

「別にどうでもいいです。早く行って帰りましょう」


 仲が悪いのか?

 親子間に入り込む気はないが、ここは見過ごしていいものなのか?

 いや、ダメだろ! ここは何かして仲良くさせなければ!


「陽葵、父さんと仲良くしろ! 仲悪いまま過ごしていくなんて後に虚しくなるぞ!」

「何言ってるの? 仲悪くないですよ? 勝手な勘違いでそんなこと言うなんて、恥ずかしいですね」


 おーっと?

 確かにこれははずいことしたかも知れないな……。

 世の中忘れるべき時は瞬時に忘れるべきだ。

 よし、忘れた──


『陽葵、父さんと仲良くしろ! 仲悪いまま過ごしていくなんて後に虚しくなるぞ!』

「!? ひ、陽葵……、一体なんのつもりだ? 録音なんてしやがって。もちろん消すよな?」

「面白い事起こるかと思ってつけたら、起こったんで良かったです。これはテープにして先祖代々の物にしようと思います」

「ちょっと、それはやめてもらえます!?」


 そんなたわいのない会話の後、墓へと着いた。


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