第7話 妹が中二病!?
家のドアを開け、小さな声で。
「ただいまー」
リビングは電気がついているので、和葉は起きているのだろう。
しかし俺はちゃんと言い訳を考えている。
言い訳すれば何とか怒られずに済むだろう。
変な汗をかきながら俺はリビングに入る。
「よっ、ちょっと部活が長び……ちょっと待てって、その持ってるもの置いてくれない? ねぇ、俺死んじゃうから!」
「お兄ちゃん木刀に弱いんだあー。いいこと聞いちゃったなあ」
そのまま和葉は木刀を大きく振りかぶると……。
「くらえ『
「お前も中二病になってんじゃ……いってぇー! ぐぐ……本当に当てる馬鹿どこにいるっていうんだ!」
俺が中二病卒業したら、今度は妹が中二病になっちまった……。
尋常ではないくらいの痛みを感じながら俺は、力なくソファーに寝転んだ。
「木刀最強かよ……。女子だからって脳天叩かれたら痛いよなあ」
「この木刀は大切にしよう。あ、そうだ、名前も考えなきゃ! んー……『ムラマサ』かな」
「在り来りだな」
……本日二度目か……。
痛い、何あの『
やはり俺も中二病に戻って『
いや、木刀に勝つより陽葵に好かれる方が俺得だし、中二病は卒業しよう。
アイツが中二病をどう思ってるかは知らんが、嫌いだったら嫌だしな。
……もしかして今俺って、世にいう『リア充』というものなのか!?
彼女いない歴が俺の年齢だったのが遂に変わったのか!
改めて思うとニヤニヤが止まら──
「ニヤニヤお兄ちゃん気持ち悪い!」
──夜十一時、三回も木刀で殴られた俺は、ベットの上に寝転がり考え事をしていた。
今後陽葵とどう過ごそうか……。
やっぱり無難にデートは外せないし、陽葵の両親の顔も見たいなあ。
……なんか色々飛び越した気がするけど、気にしないでおこう。
明日は土曜、陽葵が暇なら遊ぼうか……なって、
「電話番号教えてもらうの忘れた!!」
自分の部屋で大声を出し、隣の部屋の和葉にも聞こえたと思ったが起きてこないのでそこまで大きい声ではなかったのだろう。
明日、教えてもらおう……。
──ここはどこだろうか。
俺は自分の部屋で寝ていたはずなのに、目を覚ますと辺りはお花畑が広がっていた。
キョロキョロしている俺を見つけてか、一人の女性が。
「あら、我が『
その声を聞き振り向くと……そこにはなんと、唯衣がいた。
黒い翼を生やし、指を額に当てながらかっこつけてくる。
一体どうなってるんだ……。
「『
その聞き慣れた声、間違えるはずもなく和葉だった。
「あ、師匠! 侵入者が現れました!」
「本当ね、では『刀剣螺旋』でやっつけましょうか」
「……待て待て、落ち着けよ和葉。いきなり物騒すぎるだろ」
「何を言っているのです? 不法侵入者は死ぬべきです。さよなら、地獄でも楽しく暮らしてくださいね」
木刀を上に振りかぶり、そのまま俺を切り裂いた──
「っ……! い、生きてる? 何が起きてたんだ?」
俺はベットの上に身体を起こすと、自分のいる場所を確認した。
とりあえず俺の部屋っぽいな……。
となると、さっきのは夢……なのか?
息を荒くしながら、ボーっとしてる俺の元に、和葉が走り込むように俺の部屋へ。
「お兄ちゃん! 陽葵さんが来た……ってど、どうしたの!? 何でそんなにも震えてるの!?」
「ひいいいいっ! 唯衣と手を組んで木刀で殴るのはやめてくれ! まだ地獄に行きたくないっ!」
「何を言っているの!? 寝ぼけてんのか昨日殴って頭いかれたのかどっち?」
「多分両方だわ」
昨日殴られたのまだ痛いし、その上和葉も要件伝えるために急いできて心が変に……。
「って待て、陽葵が来てるのか?」
「そう言ったじゃん」
「そこ重要なんだから強調しろよおおお!」
少しキレながらも、あのお嬢様を待たせてはいけないという正義感のもと、急いで階段を駆け下りて陽葵の元に向かった。
家の中の玄関に立って待っていた陽葵を見て俺は思わず。
「今日の陽葵……とても綺麗だな」
陽葵の今日の格好は白のワンピースにハイヒールと呼ばれる靴、ネックレスにピアスをした、完璧お嬢様格好をしていた。
お嬢様って見せつけてきたことない陽葵が、急にどうしたんだろうと聞くのは野暮だと思いやめといた。
立っているのも気まずかったので、俺が電話番号を聞こうとした時。
「竜希さん、私とデートしてくれませんか!?」
俺の思考が一瞬止まる。
やがて、内容を理解し、陽葵の方を向くと、目尻に涙浮かべながらキラキラした目で見てくる。
緊張からくるあれか。
そんな陽葵を見て俺は。
「誘ってくれて嬉しいよ。今から着替えてくるからちょっと待っててくれ」
ちょっとキザなセリフを言って着替える為部屋に戻った。
このデートの意味も知らず。
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