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 始めて彼女が来たのは一ヶ月ほど前の事だ。台風直撃の一日前。酷い雨だったけど、どうしてもうちの店に来たかったのだと言った。バーデビューはどうしてもうちで、と。その時『甘いカクテルを』とのオーダーに出したのがプリンセス・メアリーだ。ジンベースで生クリームの入った甘いカクテルは、彼女にピッタリと似合う。

「どうぞ、プリンセス・メアリーでございます」

「わぁ、ありがとうございます」

 黒真珠の瞳にダイヤの輝き。彼女のキラキラとした眼差しがショートグラスに注がれる。

「おいしい」

“    ”

 あぁ、この胸の中の気持ちを表せる言葉が思いつけばいいのに、とそう思う。

俺の作ったカクテルを飲んで喜んでくれた時に広がるこの気持ちを、上手く言葉に表せればいいのに!

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