チェンジ〜理玖〜
小鳥遊 郁
第1話
「私は神である。そなたたちを異世界に送る前に話をしておこう」
(え! 異世界って何だ? 俺は死んだのか?)
「異世界ってなんですか? 俺は学校に行く途中だったと思うのですが」
思ったより冷静な声が出せたことにホッとした。ここで騒いだ所で何も変わらない事を理玖は知っている。
「須賀花奈、井端理玖、君達二人は大型トラックに轢かれたようだな」
理玖は神の話で思い出した。今日は剣道の全国大会の為、会場のある体育館を目指していた。その時トラックが制服を着た女の子に迫っているのに気付いて反射的に彼女を突き飛ばしたのだ。その結果ここにいるということは死んでしまったという事か?
でも彼女もここに居るから助けることも出来なかったらしい。
「俺を助けるためにあなたまで巻き込まれたんですね。申し訳ないです」
彼女が理玖の方を見て頭を下げると
「いや、本来は君は奇跡的に助かってたし、彼も助けようとしなければ死ぬこともなかったんだよ」
と神様が言った。
「「え~っ!」」
神様によるとそのままだったら須賀花奈は奇跡的に助かってたらしい。理玖が助けようとした事で運転手のハンドルがさらにきれて二人とも死ぬことになったそうだ。理玖は申し訳なさそうな顔で彼女を見た。助けようなんてどうして思ったのか。悪い事をした。
「それで異世界ってなんですか? 天国とかに行けないんですか?」
花奈はこれからの事を神様に尋ねている。確かにここで死んだ時の事をいくら謝っても無駄だ。もう死んでいるのだから。ここは花奈に習ってこれからのことを考えるとしよう。
「ふむ。もう少し揉めるかと思ってたが冷静だな。これなら異世界でも生きていけるだろう。今は天国も人数がいっぱいでな。地獄ならあまってるが君達も地獄には行きたくはないだろう。そこで異世界に行ってもらうことにした」
もう異世界に行くことは決定してるようだ。本の中の異世界って中世ヨーロッパ風とか冒険者が活躍する所だったが、ここでいう異世界とはどんな世界だろうか。出来れば文明が発達している世界が良いが.....。
「神様、いきなり異世界に行って生き残れますか?そこは魔物とか出ますか?」
理玖は急に不安を感じて神に尋ねた。中世なら良いが原始とかだったら最悪だ。生きていける気がしない。
「魔物もいるし魔法も使える。君達にもチート能力やスキルは与えよう。いきなり行って死んでもらっても困る。何度も言うが今は天国は満杯なのだ。予定以外の死人は困る。悪い事をして死ぬのは構わんぞ。地獄はいくらでも入れるからな。体型も少し変える。そのままだと目立つからな。心配するな。美男美少女にする。面影も少しは残そう」
顔も変わる事については何も感じない。理玖にとってはどうでも良いことだ。花奈は口を尖らせているからショックを受けたようだ。美男美女にすると言われても神の言うことはアテにならないとでも思っているのだろう。
「どういったスキルやチートがもらえるのか聞きたいです」
理玖は一番気になる事を聞く。この神様に全てを任せるのが不安になった。大雑把過ぎる気がした。
「そうだなぁ。君は何が欲しい?」
やっぱり何も考えてんかったようだ。
「俺は魔物と戦える力が欲しいです。あと言葉が通じないのは困るから言語は読めて書けて話せるようにしてください。いきなり魔物と戦えるとは思えないから街の中に下ろしてください。あとはお金もひと月は暮らせるだけください」
「ふむ。魔法と剣だな。あと言語能力とお金。他はいいのか?」
「冒険者になって働くからいいです。あっ、冒険者っているんですよね。行ってから実は冒険者はいない世界ってことはないですよね」
「ハッハハハ。それはない。冒険者ギルドもあるから心配するな。マジックボックスも付けてやろう。まあ魔法も剣技もある程度はできるレベルにした。君は剣道をしてたみたいだが実戦はまた違うからな。勇者ほどではないがなかなかだろう」
「ありがとうございます」
理玖は他にも忘れていることはないか考えたけど思いつかなかった。初めての経験だから何が必要かなんて暮らしてみないと分かるわけがない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます