運のネックレス

つぶやき先輩

聖書、死神、大家

第1話

携帯を見る。宝くじ、と打ち込み当選番号を確認する。30分程携帯を見ていたが(ふっ)と正(ただし)は息をついた。(やっぱダメか)小さな声で正は呟く。しばらく下を見たままボッーとしていたが、ゆっくりと部屋の右上に視点を持って行く。そこには一本のロープがぶらさがっていた。首吊り用のロープだ。どこから手に入れたかは分からないが、ロープはくすんでいた。なぜかその染みが、正には血に見える。そのロープを眺めていた正は(よし)と一言いうと、その日の為に買って置いた、軽い板の台の上に乗り、首を通した。後はこの台を蹴ればすべて終わる。正は泣きたくなった。だが涙も声も出なかった。正はチラリと部屋の片隅を見た。ゴミがまばらな部屋の隅に、聖書があった。少しの間見つめていたがポツリと(俺の人生の本にはならなかったな)と言った。これが人生の最後の言葉かと思うと、正はまた泣きたくなったが、やっぱり涙は出なかった。正の目が泣きそうな目から少し意思を帯びた目に変わった。それはこれから死ぬという思いが、目に宿った瞬間だった。正は両手をだらりと下げ、木台をおもいっきり後ろへと蹴飛ばした。ロープが首に食い込む。天井がギシギシと音を立てる。(う、ううう)と声を出しながら、体が左右に揺れる。意識が遠くなり、目がボヤけてきた。ダラリと下げたはずのては、必死にロープと顎の間に入り込んで、少しでも隙間を作ろうとしている。正の体が抵抗力を失った。体は少し左右に揺れながら、しかし正自身は全然動いていない。、、、、、、、(バキバキバキバキ、ガシャ、ドン)正の体が床に叩きつけられた。その上に木材や木屑が落ちてくる。(すーはーすーはーすー)正はおもいっきり酸素を取り込んだ。しばらくは現状を理解する時間が必要だった。、、、木が折れたのか。失敗したのか俺。(ハハ)死神にも嫌われたか。そのまま横になっていた。このまま誰か殺してくれないかなと思った。涙が出てきた。部屋の隅に置いてある聖書を睨み、神は俺をどうしたいんだ、と心の中で怒った。聖書を燃やしてやろうと思ったが、その気力が出てこない。(ピンポーン)ふいに家のチャイムがなった。(大家ですけど今すごい音がしたんですけど、大葉さん大丈夫ですか。)ヤバいと思った正は息を殺して、大家が去るのを待った。(ピンポーン、ガシャガシャ、ドンドンドン、いないんですか。警察に電話しますよ。)正は祈った。バレませんように。早く帰ってくれますように。大家は5分程して帰って行った。警察に電話されると思った正は、急いで携帯、財布だけを取り、大家にかち合わない様に遠回りして家を出た。

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