第40話 再開
「ユーリ!!」
タスクと二人で勢いよく『扉』に入ったため、少しつんのめってしまった。
観覧車の天頂付近に突如現れた――というより俺達が乗ったゴンドラが近づいていったのでそう感じただけだろうが、その『扉』に入ってみると、何のことはないいつもと同じ
入り口付近の部屋の中、ユーリがぽつんと立っている。
「ユーリ、一体どうしたんだ! なんだって急に『扉』に……」
「――あれ、ヨシカズくん? ここは一体……裏面の中ですか……?」
ユーリな不可解な反応に俺もタスクも唖然としてしまう。
無意識で裏面に入ったとでも言うのか。ユーリは自分が何故裏面の中にいるのか分からないというように周囲をきょろきょろと確認している。
「覚えてないの? 観覧車に乗ってる時、急にユーリが『扉』に入ったんだよ?」
「私が……? そんなはずは……でも確かに観覧車に乗ってたと思ってたら、急にここにいました……」
「そんな馬鹿な……」
俺が予想した通り、ユーリは自分では意識せずに裏面に入ったと言う。
俺とタスクの目の前で『扉』に入る宣言をしたユーリは、はっきりとした言葉で『裏面に入る』ことを意味する言葉を口にした。吸い寄せられるように手を掲げて。
「お、おいギイチ!」
「お前まで何だよタスク。混乱してるんだから勘弁してくれよ」
「見ろって! ここ……出口の『扉』がない……」
「何だって?」
今度はタスクが騒ぎ始めていたので何かと思ってそちらを向くと、いつもなら外に出るための『扉』があるはずの場所には何もない。タスクが言うように
「これ、まずくないか? というか、こんなことが起き得るのか?」
「いや、かなりまずいっしょ。ギイチ、入った時『扉』の大きさ、見た?」
「見た……俺達がまだ入ったことないレベルの大きさだ」
「出口がないってことは、
「そうかもな……」
平静を保つように話しているが、何が起きているのか分からず頭の中は真っ白だ。
これまでに裏面の情報はかなり調べたと思う。裏面は死と隣り合わせの場所、『知らない事』があるということは、すなわちそれだけ死に近づくということだ。ネットに上がっている情報はくまなく確認したし、それが事実であることも確認してきた。
だけど、
危険はあるものの、戻ろうと思えば出口から外に出れる。外に出れば裏面内で作った傷などは元通りになる。そういった要素が、裏面という不可解な場所に人々を足を踏み入れさせるのに一役を買っているのだ。故に、出口がない裏面なんていうものは
「タスク、大きさもそうだが……『扉』の色、見たか?」
「見た……けど、あんな色の『扉』あったか?」
「いや、見たことない。ネットにもそんなの載ってなかった」
俺達がユーリを追って『扉』に入った際、一瞬気になった『扉』の色だ。あの時はユーリを追うのに必死だったのであまり気にも止めなかったが、その色は
裏面は『扉』の色によって内部構造や出てくる敵の種類などが分かれることは今更言うまでもないが、黒の『扉』などは聞いたことがなかった。今まで見たことも聞いたこともない『扉』の見た目と、出口がないことを鑑みると、いよいよもって
どこか別の所に出口があるのかも知れない。しかしそうなると、裏面内を進む必要があるが、俺達のレベルでこの裏面内を進めるのかも分からない。混乱も相まって考えもまとまらない。
「あの……きっと、私のせいですよね。本当にすいません……」
焦りを隠せない俺とタスクの顔を見て、ユーリがそう言った。
急に『扉』に入った時は人が変わったようだったが、今目の前にいる彼女は俺達がよく知るユーリだ。申し訳なさそうな顔をして、うつむいてしまっている。
「気にしないでいいって! 出口がないなら、進みゃあいいんだよ!」
「タスク……そうだな。別にユーリのせいじゃない。俺達は
「でも、それは私が突然『扉』に入ったからですよね……」
「そうだけど――それも含めて
俺の言葉にユーリが顔を上げる。
「いいこと言うじゃねえの、ギイチくん。勿論俺も同じ気持ちだよ、ユーリちゃん。まあ、
「ヨシカズくん……タスクくん……」
ユーリは複雑な心境なのだろうか、次の言葉を紡げないでいる。
「そんなことよりまずは生きてここを出ることだ。多分出てくる敵も強いだろうから、いつも以上に気を引き締めてかないとな」
「オッケー、なんか
「タスク、お前……単純でいいな」
「失礼なやつだなあ」
タスクとそんなやり取りを見ていたユーリが少し笑った。
「とにかく前に進む。ユーリもそれでいいな?」
「はっ――はい!」
予定していなかった裏面攻略だが、三人共にやる気になったようだ。
ユーリも気持ちを取り直せたようだったので、ひとまず良かった。
互いに頷き合った後、裏面の奥へと進むための扉を開き、前へと進む。
扉をくぐった先は、広い空間――古い宮殿といったような建物内の長い通路のようなものがあった。
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